米国務省と米国国際開発庁、世界水戦略を発表

米国務省(U.S. Department of State)、及び米国国際開発庁(U.S. Agency for International Development)は2017年11月15日、米国政府における世界水戦略(U.S. government’s Global Water Strategy[1])を発表した。同戦略では、上下水道サービスへのアクセス向上による衛生状態の改善、淡水源の保護、水資源の共有化を図る協力体制の促進、水の管理体制や財政支援の強化といった、4つの目標が掲げられている。

世界水戦略は、世界の人々や国が必要とする健康で豊富且つ強靱力のある水を確保できる社会の構築を目指している。安全な上下水道の確保は、人々の健康や経済発展、和平やセキュリティの基盤である。世界の10人に3人が一般家庭で安全な飲料水を確保できていないほか、10人に6人が下水道サービスを受けていない。また水不足の問題はこの先年十年にもわたり深刻化することが予想されている。世界の3分の2の人々が2025までに水確保を巡る問題に直面するとされている。数多くの国では現在、自国の水資源を他国へ共有する取り決めや枠組みなどは存在しない。そのため、このような水資源の共有化が出来ない場合、病原菌の蔓延、経済発展の鈍化、不法移民の流入加速、一般市民の社会的不安の増大、貿易や輸出機会の低下、米国にとり重要とされる先進的な施策やプログラムの実施阻害など、様々な問題を引き起こす可能性がある。

このような問題解決に向けて、米国政府は世界水戦略を実施するために、海外諸国や主要ステイクホルダーと共同で取り組み、以下の4つの目標を達成することを掲げている。

  • 持続可能性が高く安全な上下水道サービスへのアクセスを向上し、衛生状態を改善する
  • 淡水源を保護する
  • 水資源の共有化に向けた協力体制を促進する
  • 水の管理体制や財政支援を強化する

米国政府は、世界水戦略を実施するにあたり、上記の目標を達成する必要性やその潜在機会が最も高く、支援を通じて米国の国家セキュリティの保護に最も貢献できる海外諸国や地域を優先対象とする。優先対象としては、以下の13の国・地域が挙げられている[2](各国・地域の公衆衛生サービスへのアクセス率と飲料水サービスへのアクセス率についても掲載)。

Country Sanitation (%) Drinking Water (%)
アフガニスタン 39 63
コンゴ民主共和国 20 42
エチオピア 7 39
ハイチ 31 64
インドネシア 68 90
ヨルダン 97 99
ケニヤ 30 58
レバノン 95 92
リベリア 17 70
ナイジェリア 33 67
南スーダン 10 50
ウガンダ 19 39
ヨルダン川西岸地区/ガザ 96 88

 

同戦略では、合計17機関以上に及ぶ連邦省庁による取り組みが反映されている。安全な水を確保できる社会を構築するために、米国全土に点在する知識、専門性、人材を集積することを計画している。同戦略は、Paul Simon上院議員が提案し2014年に成立した“Senator Paul Simon Water for the World Act of 2014”により策定が義務付けられていた。

[1] https://www.usaid.gov/sites/default/files/documents/1865/Global_Water_Strategy_2017_final_508v2.pdf

[2] https://www.globalwaters.org/WhereWeWork/priority-countries