米国シカゴを拠点とする持続可能な水利用を促進する非営利団体Alliance for Water Efficiency（以下、AWE）は2017年12月14日、水利用の効率化を促進する投資プログラムがもたらす短期的な経済効果を定量的に検証した報告書“Transforming Water：Water Efficiency as infrastructure Investment[1]”を発表した。同報告書によると、水効率化の促進に向けて100億ドル（約1兆1037億円）を直接投資した場合、6.5兆から10兆ガロンに及ぶ水を削減すると同時に、130億から150億ドル（約1兆4348億円から1兆6556億円）の経済成長（GDP）をもたらすほか、12万件から26万件の新規雇用を創出する。

同報告書では、水効率化へ投資することで、節水のみならず、米国経済の成長や産業セクタにおける雇用創出をもたらす経済効果が分析されている。水消費量100万ガロン当たり平均1200ドルを費やした水効率化プログラムを展開することで、1日当たり23億ガロン、累積で8兆3000億ガロンを節水することができるほか、GDPの増加や雇用創出が見込まれる。水効率化プログラムへ10億ドル（約1104億円）を直接投資した場合にもたらされる直接的な経済効果は以下のとおりである。

• 直接投資額10億ドルにつき25億から28億ドル（約2759億円から3090億円）に上る経済効果をもたらす
• 直接投資額10億ドルにつき13億から15億ドル（約1434億円から1656億円）に及ぶGDPの増加をもたらす
• 直接投資額10億ドルにつき12,000件から26,000件に上る新規雇用を創出する

節水イニシアティブValue of Waterが最近実施した世論調査によると、他の課題よりもインフラへの投資を優先させることを、米国人は議会やトランプ政権へ求めている。調査回答者のうちの67％が水インフラへの投資は重要または最重要な課題であると捉えているほか、82％が全てのコミュニティに対して安全且つ信頼性の高い上水道を提供するために水インフラへの投資を支援している。AWE理事長兼CEOを務めるAnn Dickinson氏は、「水インフラへの投資は、多額のコストを要する下水処理場や貯水池などの施設整備に留まらず、低コストで実施可能な節水プログラムの実施も含まれる。これらのプログラムは強固な経済利益を生むことから、政策立案者は優先的に取り組むべきである」と述べている。同氏は更に、従来の公共インフラへの投資とは異なり、水効率化への投資は短期間で実施可能であり、手軽に拡張及び適応することができる、と強調した。

今回の報告書ではまた、水効率化への投資は直接的な経済効果だけでなく、従来のインフラ投資と比較して、長期的な製造セクタの活性化につながるほか、エネルギーセキュリィの向上や持続可能な水源利用の促進、温室効果ガス排出削減、水資源を巡る地域紛争の緩和など、様々な間接的な波及効果もあるとされている。AWEのDickinson氏は、「水効率化への投資は、我々が明確に把握する経済効果だけでなく、様々な定量的な間接利益をもたらすため、我が国の将来へ必要不可欠な投資である。地域的な水不足問題の早急な対応への必要性にかかわらず、全てのコミュニティは公共投資として水効率化を優先的に進めるべきである」と述べている。水効率化への投資は以下の間接的な利点をもたらすとしている。

• 水利用者に対して、水道使用料金を管理し削減を促す
• 水効率化関連技術の開発において業界先駆者としての米国製造業者の位置づけを強化する
• 水インフラが十分に整備されていない貧困層や低所得コミュニティを支援する
• 地域コミュニティと直接つながり市民とのエンゲージメントを図る
• 水資源を巡る長期的な政治的紛争の軽減を支援する
• 上水道システムの運営に必要となるエネルギー消費量を削減する。その結果、国家のエネルギー自立を高める

今回の調査は、米国の地域水供給事業者が実際に展開する水効率化プログラムの概要やコストに基づき試算、分析されている。同プログラムには、屋内外を対象とした節水改善、商工業施設及び公共施設を対象とした水効率化の促進、上水道システムの効率性向上などが含まれている。これに基づき、水効率化プログラムへの大規模な投資に対する短期的な経済効果が検証された。

[1] http://www.allianceforwaterefficiency.org/WorkArea/DownloadAsset.aspx?id=10247