Fluence、現地パートナーとともに中国・湖北省の下水処理設備を受注

2018年7月6日、米水処理大手Fluence Corporation社(本社:ニューヨーク州ホワイトプレーンズ)[1]は、中国国内のパートナーとの連携の下、湖北省の高速道路サービスエリアにおける下水処理設備を受注したと発表した。Fluence社は、今回の受注を手がかりとして、独自のメンブレンエアレーション型バイオフィルムリアクター(MABR:Membrane Aerated Biofilm Reactor)を軸とする「Aspiralスマートパッケージソリューション」の普及を目指す。


図 Aspiral MABRユニット
(出典:Fluenceホームページ)

同社が今回受注したプロジェクトは、孝感市にある高速道路サービスエリア内で発生する廃水を処理するためのプラント(処理能力200 m3/日)を設置・運用するというもの。2018年8月までに2機の Aspiral L4ユニットの試運転を終え、操業を開始する計画となっている。Fluence社が湖北省内で廃水処理を受注するのは今回が2件目であり、1件目は2017年6月に試運転に成功している。今回、Fluence社は新たに現地に販売ネットワークをもつHubei Communication Investment Intelligent Detection社(以下、「Hubei ITEST」)とパートナー契約を締結した。契約の条件として、今回の試運転が成功した場合、Hubei ITESTが管轄する湖北省内の高速道路の残りのサービスエリアにもAspiralシステムを導入することが予定されている。Fluence社は、中国国内で生産するシステムにより、中国の廃水処理に関する厳格な基準に適合するサービスを提供できると自信を見せている。Aspiralが今回選定された理由としてFluence社は、その環境負荷の低さと、廃液の質に関する国内基準「1A」を達成可能な処理能力を挙げている。

今回の受注およびパートナーシップに関して、Hubei ITESTのHui Du社長は次のようにコメントした。「実績あるMABR技術に基づくFluence社のAspiralスマートパッケージソリューションを利用できることを喜ばしく思っています。当社は、Fluenceと協力することで、湖北省の高速道路サービスエリアに魅力的な新しい廃水処理ソリューションを提供できると期待しています」

また、Fluence社の社長兼CEO、HenryCharrabé氏は次のように述べた。「湖北省内でのAspiral事業の拡大を図るため、Hubei ITESTと協力できることを嬉しく思います。MABR方式は、空間が限られた中で騒音や臭いを抑制しなくてはならず、かつ1Aクラスの廃液が求められる場合に、とりわけ有効です。我々は、湖北省内の高速道路沿いに存在する需要に大きな成長の可能性を見ています

EnviXコメント

FluenceはもともとアメリカのRWL WaterとオーストラリアのEmefcyが合併してできた会社であるが、RWL Water[2]は以前から中規模プロジェクト(同社によると500万ドル~3500万ドル程度の案件)での競争力強化を目指しており、また同様にEmefcyもパッケージ化された下水処理モジュールを新興国や開発途上国などにおける中規模施設への導入を行ってきた。こういった両者の目論みが一致することでFluence社は創られたが、まさにそのシナジーが現れはじめている。Fluenceの2017年売上は当初予測よりも下方修正され5700万ドルだが、2018年には前年の受注分の影響を受けて約2倍近くになると見込まれている(下図)。


図 Fluenceの売上実績と予測(2016年~2020年)(単位:百万ドル)
(出典:Fluence Investor News)

Fluenceは、今年2月には世界的市場調査会社Frost & Sullivanより“2018 Global Decentralized Water & Wastewater Treatment Company of the Year”を受賞し、いままさに注目を集める水ビジネス企業のひとつと言える。規模は大きくないものの、パッケージ化することでコストを抑えたFluenceの水処理モジュールの市場攻勢には今後も注視したい。なお、Fluenceが自社資料のなかで発表しているパッケージ化された水処理プラントの世界市場規模は下図の通りであり、今後も順調な拡大が期待されている。


図 Smart Packaged Plantの世界市場規模
(出典:Fluence Investor News)

[1] 2017年、米水処理大手Emefcy社がMABR技術の開発を進めていたオーストラリアのRWL Water社と合併して誕生した。水処理から廃水処理、廃棄物発電、海水淡水化、水の再利用・回収などをフルサービスで提供する。従業員約300名。

[2] Fluence社は、2017年にRWL WaterとEmefcyが合併してできた会社である。詳細については、EWBJ62号に関連記事あり「RWL Water、Emefcyとの戦略的提携を発表

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