米エネルギー省(DOE:Department of Energy)は2018年12月13日、米国内における水の安全保障に関する課題を解決するため、エネルギー・水脱塩拠点(Energy-Water Desalination Hub)の設立に向けて1億ドル(約109億6200万円)を投資すると発表した。同拠点では主に、製造過程の課題解決につながる省エネ且つ低コストな脱塩技術や、様々な分野へ適用可能となる非従来型(海水、半塩水、再生水等)の水処理技術といった、初期段階にあるこれらの技術の研究開発を行う。
DOEのRick Perry長官は、「エネルギー・水脱塩拠点を通じて開発される研究成果は、2018年初頭にホワイトハウスが発表したイニシアティブ『水の安全保障グランドチャレンジ(Water Security Grand Challenge)』を通じて策定された複数の戦略的目標の達成に役立てられる」と述べた。同長官は更に、コスト競争力が高い方法で脱塩を行う変革的な技術の研究開発を焦点とすることで、国内外のニーズを満たす安全且つ低価格な水資源を確保することができる、と強調した。同長官は2018年3月にホワイトハウスにてラウンドテーブル会議を主催し、深刻な水問題の解決に向けて技術的イノベーションを促進するため、コンテスト(コンペ)を行う方針を明らかにした。DOEは現在、エネルギー・水との融合分野(エネルギー・水のネクサス)においてイノベーションをもたらすコンテストやこれに付随する研究開発の実施に向けて関連機関とともに取り組んでいる。
エネルギー・水のネクサスとは、エネルギー分野には大量の水を必要とする一方、水分野も多大なエネルギーが必要であるなど、エネルギーと水とは密接に相互依存している。エネルギー分野では、エネルギー生産や発電、バイオ燃料の灌漑や火力発電所の冷却水などの様々な過程に水が活用されているほか、水分野でも取水や水処理、水供給などにエネルギーが使われている。水処理には多大なエネルギーを必要とし、水分に含有する塩分量が増加するにつれて、浄化(水処理)がより困難となりエネルギーコストが増える。
今回設立されるエネルギー・水脱塩拠点では、地方自治体による水道水や産業用水の供給、またはそれ以外の新たな水資源として、海水、半塩水、再生水などの従来利用してこなかった水を低コストで処理する脱塩技術の研究開発も行う。脱塩技術の研究開発に成功すれば、淡水の確保に対するニーズを軽減させることが可能となる。世界的に淡水が不足していることが、社会の様々な分野に影響を与える人道的及び経済的な課題である。
DOE省エネ・再生可能エネルギー局先端製造室(DOE Office of Energy Efficiency and Renewable Energy’s Advanced Manufacturing Office)が、エネルギー・水脱塩拠点の設立を支援する。同省は予算額に応じて今後5年間に亘り補助金を付与する。同拠点では、①素材の研究開発、②新規過程の研究開発、③モデリングとシミュレーションツール、④データとアナリティクスの統合といった、4つの技術的トピック分野における目標達成に向けて取り組む。