エンジニアリング、建設、製造など多岐にわたる事業で知られるインドのコングロマリットLarsen & Toubro(L&T)(本社:マハーラーシュトラ州ムンバイ)の経営幹部によると、同社は浄水と廃水処理のプロジェクトの売上を、政府出資の水インフラプロジェクトや産業向けの淡水化事業などによって向こう3年ないし4年のうちに現在の倍の40億ドル(約4300億円)にすることをめざしている。
インドの浄水・廃水処理ビジネスはこの数年間、力強い成長をつづけてきており、この勢いは当分つづくものとみられている。こうした水ビジネスがインドのふたつの大きな課題――水の危機、および淡水化を含む水インフラの整備――を解決してくれるからだ。L&Tで水ビジネスを統括するS. Rajavelはこう述べている。「われわれは売上で28%、受注ベースだと年30%の割合で成長をつづけてきた。このビジネスの潜在力を考えると、向こう3年ないし4年のあいだ同じ割合で成長することが期待できる」L&Tの水ビジネス部門の現在の受注残は60億ドル(約6400億円)にのぼる。
L&Tの水ビジネス
L&Tの主要事業体であるL&T Constructionの浄水・廃水処理部門は、都市と農村部の上水道、産業用水供給施設、浄水プラント、下水処理プラント、下水道網、廃水処理プラント、淡水化プラント、マイクロ灌漑と用水灌漑、水路整備、不明水(UFW)対策、水管理などの水インフラ事業を専門としている。L&Tの副社長を務めるRajavelはL&Tのスマート・ワールド・イニシアチブのトップでもあり、スマート・シティの基準に適合する水インフラの提供にも携わっている。Rajavelはこう言う。「今年実施した調査によれば、この部門には1兆3000億ルピー(約1兆9000億円)の需要が見込まれる。市場にはさまざまな分野があるが、われわれは現在、市場全体としてのリーダーであり、それを維持することを願っている」
L&Tの水ビジネスは、これまでのところ政府発注に大きく依存してきた。そのおよそ30%のプロジェクトは、世界銀行、アジア開発銀行などの国際機関が資金を提供している。2019年7月中旬、L&Tはグジャラート州産業開発公社から100億~250億ルピー(約150億~370億円)という過去最高額の淡水化プロジェクトを受注した。このような高額の受注は、各州が浄水・下水処理への投資を増やすにつれて今後増えていくことが見込まれる。Rajavelはこう述べている。「政策スタンスが変わり、州はいま、上水の供給と、下水を処理して灌漑用水として利用することに力を注いでいる。われわれはターンキー方式のプロジェクトを請け負っており、社内にこの分野の技術開発を専門におこなうチームを設置している」
年間売上200億ドル(約2兆1000億円)のL&Tにはいくつかの比較的新規のビジネスがあるが、そのなかでも浄水・廃水処理ビジネスは最も成長の速いもののひとつである。L&Tは、他のビジネス部門の東南アジア諸国でのプレゼンスをてこに、浄水・廃水処理ビジネスをそれらの国々ではじめることを計画している。同社はすでに、インド以外ではスリランカ、カタール、アラブ首長国連邦、オマーン、およびタンザニアで水処理のプロジェクトを実施している。
インドにおいては、インフラ開発の原動力となっている国家スキームとして、国家農村部上水プログラム(NRDWP)、再活性化と都市変革のためのアタル・ミッション(AMRUT)、ガンジス川浄化のためのNamami Gange、灌漑用水プロジェクトのPradhan Mantri Krishi Sinchayee Yojana(PMKSY)、デリー・ムンバイ間産業大動脈開発などがある。