SUEZが、カタールでマルチユーティリティの合弁会社を立ち上げるための第1歩を踏み出した。今後予想される都市開発に乗じてビジネスを展開していくには理想的なかたちといえる。

SUEZは2008年5月24日、カタールの不動産デベロッパーQatari Diarおよびその子会社のBarwaと戦略的提携の合意書にサインした。これでSUEZは、マルチユーティリティ･サービスを提供する合弁会社を設立し、中東の新都市開発を利してビジネスを展開するための第1歩を踏み出したことになる。

合意書の調印式はパリで行なわれ、SUEZのGérard Mestrallet会長兼CEOと、Qatari DiarのGhanem Bin Saad Al Saad CEOが出席した。

この合意についてSUEZ EnvironmentのJacques Blein投資･プロジェクト･リスク担当副社長は、SUEZ、Qatari Diar、Barwaの3社とも、「数日ないし数週間のうちに」合弁会社ができると考えており、「合弁会社を立ち上げ、Qatari DiarとBarwaがすでに開発をはじめているふたつの都市における可能性を精査するための共同チーム」をつくっているところだと述べた。

Blein副社長のいうふたつの都市とはLusailとAl Khorで、Lusailは首都ドーハの中心部から15キロメートルほど北にある新開発都市、Al Khorはドーハからカタールの東岸沿いにさらに北へ行ったところで開発が進んでいる都市である。両市とも中長期的には人口が20万人程度になるものと見られており、開発費用はLusailが50億ドル（約5400億円）、Al Khorが70億ドル（約7500億円）と見積もられている。新たに設立される合弁会社は、Qatari DiarとBarwaが開発する新都市のユーティリティを独占的に任されることになる。

SUEZがQatari Diarと組んで仕事をするのは、この合弁事業がはじめてではない。SUEZ傘下のDegrémontは、Lusailの日量6万立方メートルの下水処理･再利用プロジェクトを請け負っており、これはまもなく完成する。新たに設立される合弁会社は、下水処理ばかりでなく、浄水処理と配水、送電と配電、地域冷房、および固形廃棄物の収集と処理といったサービスも提供する。

これについてSUEZ EnvironmentのBlein副社長はこう述べている。「Lusailの場合もAl Khorの場合も、新都市を開発する際に重要なのは、はじめからすべてのユーティリティを完備することだ。それにはさまざまな専門分野をカバーする必要があるが、われわれは、そのすべてをカバーできる数すくない企業のひとつだ。ある一定規模の新都市を建設するのに、マルチユーティリティというアプローチがきわめて適しているとわれわれは考えている」

今回の合弁事業による仕事は、SUEZのカバーする専門分野を総動員するもので、SUEZ Environmentが上下水道と廃棄物を受け持ち、SUEZ Energy Servicesがエネルギーと地域冷房を担当する。

Blein副社長はさらにこうつづける。「ゼロからスタートして、都市のマスター･プランの策定、あらゆる資本支出の金額と必要時期の見積、および必要となるあらゆる機器類やインフラの計画に参画できるわけだ。マルチユーティリティの建設･運営業者として、われわれはこれらすべてを規模の面でも導入時期の面でも最適化するためのさまざまな専門的ノウハウをもっている。ゼロからのスタートの場合は、すべてのネットワークをいっしょに建設、管理することができるので、最適化の面でもわれわれにできることは多い」

SUEZがターゲットにしているのはカタールだけではない。「われわれはサウジアラビアでも、King Abdullah Economic Cityをはじめとするさまざまな都市に注目している。また、ドバイとアブダビからも目が離せない。単一プロジェクトの可能性もあるし、淡水化とマルチユーティリティのビジネスができるチャンスもあるからだ。カタールの強力なパートナーと組む今回の合弁事業は、われわれが効率的だと信じるコンセプトを実現していく上で真の突破口となるにちがいない」