Siemens Water Technologiesはアブダビとリヤドに新たなコンピテンス・センターをつくるなど、中東におけるプレゼンスの強化につとめている。「これらの都市における水需要の増大、また、石油やガスなどの産業の環境規制が厳しくなっていることなどからくる産業用水需要の増大により、この地域に浄水および廃水処理の新たな方策が必要になってきている」Siemens Water Technologiesのヨーロッパ、アフリカ、および中東の事業開発を担当するRoland Fischerは同社の中東における最近の動きをこう説明する。Siemensは、この地域におけるプレゼンスを高め、浄水および廃水処理のサービスとソリューションの範囲を拡大していくために、およそ1000万ドル(約10億4000万円)を投資し、2010年までにおよそ30人のプロセスおよびアプリケーション・エンジニアと化学者を新規採用するとともに、現地の自社製造施設の活用を進めていくことにしている。
「都市の拡大と経済成長により、きれいな飲用水の供給とじゅうぶんな廃水処理への要求が高まっている」とFischerはいう。Siemensの技術への需要が増していく分野としては、産業プロセス用水処理、膜濾過システム、殺菌装置、高度産業廃水処理、膜リアクターを使った生物学的廃水浄化、および初沈汚泥処理が考えられるという。たとえば、Siemensは最近、クウェート市郊外の日量1億8000万リットルの廃水処理プラントに高性能栄養塩除去システムを納入する契約を獲得した。このソリューションは、Siemensの新しい生物学的プロセス最適化プログラム――BioFlowsheet Solutions――にもとづくもので、廃水処理プラントの排水水質レベルの向上に役立つ。520万ユーロ(約8億3000万円)をかけて建設されるこのプラントは、2010年に運転を開始する予定である。
石油およびガス産業、それにコミュニティを対象とした水ビジネスでは特に、プロジェクトの成功がさらなる発展のいしずえとなる。
「これからますます重要になっていく分野としては、このほかに水の移送と配水がある」とFischerはいう。この見かたの裏づけとしてあるのが、パイプライン・システムやそれに付随するポンプ施設への機器の供給、およびアラブ諸国や北アフリカ諸国のニーズに応える無故障運転のための漏洩検知器や自動化ソリューションの提供といった分野で蓄積されたSiemensの経験である。たとえば、2007年11月15日、SiemensはサウジアラビアのShuqaiq浄水システムの契約遂行にゴー・サインを得た。このプロジェクトは、サウジアラビア南西海岸のShuqaiq淡水化プラントから比較的人口の多い地帯へ飲料水を移送する事業を含んでいる。900キロメートルものパイプラインと8ヵ所のポンプ施設が、1日に40万立方メートルの水をサウジアラビアの家庭にはこぶのである。
Fischerはさらにこうつづける。「われわれはみずからのソリューション、システム、および製品によって、この乾燥地帯においてますます重要になりつつある天然の水資源の利用管理の改善へ向け、コミュニティや産業界の力になることができる。さらにまた、廃水を処理して再利用する技術により、今後長期にわたってこの地域の水需要に応えていくことができる」
なお、Siemens Water Technologies(アメリカ、ペンシルヴェニア州Warrendale)は、Siemens VAI Metal Technologies(オーストリア、Linz)やIndustry Technologies(ドイツ、Erlangen)などとともに、産業およびインフラ分野におけるソリューションとサービスの世界有数のサプライヤーであるSiemens Industry Solutions Division(ドイツ、Erlangen)の傘下にある。このIndustry Solutions Divisionは、みずからの製品、システム、およびプロセス技術により、プラントの計画から設計・建設、運転開始、保守にいたるまで、全ライフサイクルにわたってサービスを提供している。
Siemens Industry Solutions Divisionがその一部門であるSiemens Industry Sector(ドイツ、Erlangen)は、生産、輸送、および建設技術の世界のトップ・サプライヤーで、Building Technologies、Industry Automation、Industry Solutions、Mobility、Drive Technologies、およびOsramの6部門から成る。Siemens Industry Sectorは世界中に20万9000人の従業員を擁し、2007年度の総売上は約400億ユーロ(約6兆5000億円、ただし非連結の概算値)だった。