ECと欧州投資銀行が地中海の汚染緩和のための44の環境改善プロジェクト案を発表

2008年4月10日、欧州委員会(EC)と欧州投資銀行が地中海の汚染を緩和するために最も効果的と思われる44の環境改善プロジェクト案をまとめた報告書を発表した。これらのプロジェクトは地中海の南岸および東岸のエジプト、イスラエル、ヨルダン、モロッコ、パレスティナ、シリア、チュニジアを対象とするもので、これらの国の政府が実施の意思を示せば、欧州連合(EU)から補助金や資金の貸し付けが受けられるという。

 

これらのプロジェクトを実施することによって必要になる資金は21億ユーロ(約3300億円)と見られており、その資金はEUの補助金プログラムや欧州投資銀行からの融資のほか、アラビア湾岸諸国からの寄付金によってもまかなわれることになっており、発表の記者会見を行った欧州委員会環境総局国際問題担当のSoledad Blancoは「これらの作業をすべて行うには莫大な資金が必要になる。どのような方面からであれ、寄付は歓迎するし、もちろん、政治的な支援もありがたい」と語っている。

ただ、もちろん、金がかかるだけのプロジェクトではない。環境汚染を緩和する効果が見込まれるので、この記者会見の席に同席した欧州投資銀行副総裁のPhilippe de Fontaine Viveは、それでも、それだけの資金を投じて環境汚染の緩和に取り組んだほうが結果的には「安くつく」と語っている。

 

この報告書で取り上げられているのは、先にまとめられていた「汚染ホットスポット」のリストの中から選ばれた131の地域に関するものであり、当初の「ホットスポット」のリストには、アルジェリアやレバノンも対象地域として含まれていたが、アルジェリアは「国内に十分に資金があり、国外からの資金援助に興味を示していない」ので削除され、レバノンも、安全性に問題があり、プロジェクト案を作成するための視察チームが入国できなかったので、同じく削除されている。

 

今回発表されたプロジェクト案の多く(25プロジェクト)は都市の廃水処理に関するものであり、あとは都市の廃棄物に関するもの(8プロジェクト)、工場からの排気ガスに関するもの(6プロジェクト)などが含まれている。その中でも最も巨額の投資を必要としているのは、ヨルダンのWadi Zarqa地域の廃水処理プラントの建設プロジェクトで、1億7200万(約273億円)が必要になると見られている。

 

これらのプロジェクトの洗い出し作業は、欧州委員会が2006年11月に、2020年までに地中海とその周辺地域の汚染を緩和することを目指して「ホライゾン2020」構想を打ち出したのを受けて行われたものである。