アメリカ水道協会(AWWA)は2008年10月23日、State of the Industry Report(業界の現状報告)の2008年版を発表した。これは、「水ビジネス業界の健全性」と「主要課題」について1800人以上の水の専門家に尋ねた結果をまとめたもので、それによると、上水道ユーティリティや水ビジネスの専門家の懸念事項として、きれいな原水の減少とインフラの老朽化が上位を占めた。
原水の問題はこの報告書でもあいかわらずトップの懸念事項になったが、短期(向こう1年ないし2年)と長期(向こう3年ないし5年)の両方の懸念事項に挙げられたのは今回がはじめてである。
インフラの問題は懸念事項としては2番目、取組が不十分な分野としてはトップとなった。なお、水源とインフラに次いで懸念されているのは、規制の問題である。
AWWAで対政府の折衝を担当しているTom Curtis副会長は今回の報告書について、「水道セクターが直面している課題を最も総合的に網羅したところに意味がある」と述べている。同副会長は、過去5年のあいだに、原水の水質と水資源の確保についての懸念がかなり大きくなってきたという。また、プロジェクトの資金調達や上下水道ラインの補修についての懸念も高まっているという。
水質については、汚染物質を検出する診断ツールが発達したことにより、以前には検出できなかった化学物質が検出できるようになった。なかには、ppt(1兆分の1)の単位で検出できるものさえある。「ずいぶん詳しくわかるようになったものだ」とCurtis副会長はいう。
同副会長はまた、気候変動の影響についても触れ、高山の雪の融解が水資源減少のひとつの原因になっていることを指摘した。しかし、水不足への懸念は2001年9月11日の同時多発テロ以来、やや弱まった感があると同副会長はいう。あの事件以後、水道業界はセンサーなどのセキュリティ関連機器の設置に追われたのである。
AWWAの報告書は、水質の問題について、原水と水道水に薬剤が含まれているという報道が業界の懸念材料になっているが、「そうしたマイナスの報道がなされる前から原水への懸念は増していた」と述べている。同報告書はさらに、「原水に関する懸念の最大の部分は、あいかわらず、処理可能な水をじゅうぶんに確保するという基本的な必要事項にかかわるもので、こうした懸念は特に、需要が急速に伸びている地域や気候面でめぐまれていない地域で顕著に見られる」ことを強調している。