深海海水淡水化装置の試作品、貯水池の底で試験開始へ

深海海水淡水化装置の試作品がオレンジ郡にあるSan Joaquin貯水池の底に設置されたとOrange County Register(新聞)が2009年9月3日に報じた。

この装置は、深海の高圧を活用して海水をずらりと並んだ膜に通して得られた淡水をポンプで海面にくみ上げるというものである。

DEMWAXと呼ばれるこの装置を開発した会社は、カリフォルニア州のTustinに本拠のあるDXV Water Technologiesである。

同社のMichael S. Motherway社長によれば、850フィート(約260m)の水深の強烈な圧力が電力の代わりをする。

この装置の発明者は、同社のDiem X. Vuong CEO(最高経営責任者)である。

 

この会社のウェブサイトによれば、装置の膜カートリッジは、水塊の底に固定される。連続して垂直に並べられた膜の平らな面は、生産される水と比べて大量の源水が膜を通ってスムーズに膜を流れすぎることができるように間隔があけられている。この構造によって極めて少ないエネルギーを用いて装置が運転できる。捕集導管によって膜から処理水が集められ、標準的な水中ポンプを用いて海岸に送られる。

DXV Water Technologiesは、この構造によってカーボン・フットプリントの削減、水生生物の衝突や取り込みの削減などの環境面でのメリットが得られるとしている。このプロセスはまた、装置に残った塩水の塩分濃度を高めないし、水の自然な動きによってこの残った塩水も装置の周辺の海水と混ぜられて、海水の塩分濃度に戻ってゆく。

これまでの海水淡水化システムは、海水を取り込むために沿岸に設置された取水管を用いるので、海生生物の卵稚仔に壊滅的な影響を与えることが多い。また、海水を押して逆浸透ろ過膜を通過させるために大量の電力を消費する。このような理由で、環境保護団体から猛烈な反対を受けることが多い。

Vuong CEOは、「われわれは、環境に優しくあろうとしている」と述べた。

 

San Joaquin貯水池の底に設置されたスーツケースの大きさに作られたこの装置の試作品は、このシステムの保守要件を見出すために試験するために貯水池の処理廃水を浄化することを目的とするものである。生産された水は、オレンジ郡の給水には使われない。

Motherway社長は、1年以内に大洋にパイロットプラントを設置するつもりであると述べたと伝えられる。

Vuong氏とMotherway氏は、かれらの技術を用いた本格的な深海施設は、約3億5000万ドル(約320億円)のコストがかかると述べた。この金額は、カリフォルニア州のCarlsbad近くに建設中の沿岸海水淡水化施設とほぼ同じである。

Vuong氏は、DEMWAXプロセスを用いた施設ができるのは、10年以上先になると述べた。

 

なお、上記施設の図は、以下のウェブサイトで見られる。
http://greenoc.freedomblogging.com/2009/09/03/torrents-of-fresh-water-from-the-ocean-deep/12289/

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