カタールのSterling Water社とNew Mexico州立大学が省エネ淡水化技術のライセンス契約を締結

カタールに本社を置くSterling Water社New Mexico州立大学(アメリカ)のArrowhead Centerは、2010年2月22日、同大学のエンジニアが開発した革新的な低コスト淡水化技術のライセンス契約を締結したと発表した。この技術は、温室効果ガスを排出せずに1日24時間休みなく淡水化を行うことができるものである。同技術に必要なエネルギー量は非常に少なく、既存のソーラー発電やエアコンの廃熱の利用によって淡水化を行うことが可能である。同技術を用いた初めての淡水化装置は、1日に200ガロン(約750ℓ)以上の淡水を造水しており、これは、約15人の需要を満たす量に値する。

同技術は、2009年、New Mexico州立大学のNirmala Khandan博士が率いるプロジェクトチームによって、開発された。同技術には、フロリダで最初に開発された“塩水の蒸発を、一般的な蒸発プロセスにおける温度(60~100℃)より低い温度(45~50℃)で行う技術”が応用されている。重力や大気圧が自然にもたらす効果を利用して、ほぼ常温で水が蒸発および液化する“真空状態”をつくりだし、淡水化を行うのである。

淡水化装置には、2つのチューブ(長さ約9m)が垂直に設置され、一方のチューブの下には塩水が、もう一方には真水が入ったタンクがセットされる。これらのチューブは、別のチューブによって水平方向に接続される。この装置は、常温条件下では、平衡状態を求めて、真水から蒸発した水が塩分タンクへと移動する。しかし、塩水タンク上に設置されたチューブの上部にできた空間をもう一方のチューブより温度がやや高くなるよう(10~15℃)暖めることで、流れが逆になり、塩水から蒸発した水が真水側へと流れるようになる。塩水タンクには、濃縮されたブラインが残る。

以上のような淡水化プロセスを採用しているため、同技術が消費するエネルギー量は少なく、ディーゼルエンジンや冷蔵庫、エアコンなどの廃熱の利用あるいはソーラー発電によって淡水化を行うことが可能である。また、様々な熱源を利用できるため、電力などの従来のインフラにとらわれることがない点も優れている。

一方、同技術の課題は、他の淡水化技術と同様、濃縮されたブラインが残ることと、装置の高さが高いことである。Sterling Waterは、これらの2つの課題を解決して、次世代装置を市場に投入したい意向である。

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