水不足に悩むジャカルタで、新たな上水道ネットワークが2012年から全面稼働をはじめる。これは同市の上水道サービス改善策の一環として実施されているプロジェクトで、これについてジャカルタ上水道規制局の幹部、Firdaus Aliはこう述べている。「このネットワークにより、浄水処理済みの水が新たに毎秒4000リットル、密閉型のパイプを通って市内に運ばれる」と述べた。
この2兆1000億ルピア(約210億円)のプロジェクトは、水不足にあえぐジャカルタ市民に飲料水を供給するために、インドネシア政府と民間が資金を拠出して進められている。ジャカルタは現在、人口の増加に上水の供給が追いつかず、未曾有の水危機にみまわれている。多くのジャカルタ市民はきれいな水を得るために余分な出費を強いられ、やむをえず地下水を過剰に利用しているため、これが地盤沈下の大きな原因になっている。
最近では、2010年5月はじめに、上水道会社であるPT Aetra Air JakartaのPulogadung水道施設のポンプが故障し、ジャカルタ市東部の15万世帯が断水した。
ジャカルタの水道水は、ジャワ島西部のJatiluhurダムからTarum Barat川を経てはこばれてくる。前出のAliは、Jatiluhurダムからジャカルタに供給できる水の量は1998年以来ずっと毎秒1万7800リットルと、すこしも変わっていない」という。Aliはさらに、この量ではもはやジャカルタ市民の需要を満たすことはできないと述べている。
水問題の専門家らは、ジャカルタ市がJatiluhurダムに頼りきっていることを批判し、こうなる前に、人工湖を新たに建設するなど、持続可能な他の方策をみつけるべきだったとしている。
これに対してAliは、ジャカルタ市当局は世界銀行の管理下にある「成果ベースの支援のための世界パートナーシップ(GPOBA:Global Partnership for Output Based Aid)と協力して成果ベースの支援を実施し、市内の貧困家庭4630世帯に水道の利用を可能にしたと反論している。
しかし、この数字は目標とする2万3000世帯にはまだほど遠い。だが、Aliは、「この支援スキームは2013年までに1000万世帯に水道を引くという政府の約束の実現に向けた努力の一環だ」という。
こうした支援事業とは別に、インドネシア政府はジャカルタ市当局と協力し、West Tarum運河で漏洩を起こしているパイプの修理を進めているところである。この運河は、ジャカルタ周辺のバンドンその他の都市の工業廃水や都市廃水のために汚染が激しく、水質が基準以下となっている。