米スタンフォード大学の研究チーム、廉価で高速処理が可能な水フィルタを開発

米国スタンフォード大学の研究者たちが木綿を銀ナノワイヤーやカーボンナノチューブで「ナノコーティング」し、導電性のあるそのコーティングに電流を流すことによって、既存の浄水システムのフィルタより8万倍も高速で水を浄化することができるフィルタを開発した。それほど特別な材料を使用するわけではないこのフィルタは製造コストを比較的安く抑えることができ、電力もそれほど消費せずにすむ。このため、このフィルタは、開発途上国での水のろ過にも使用することができると予想され、コレラ、腸チフス、肝炎など、水を介して感染する病気の蔓延対策に役立てられると期待されている。

このフィルタは、銀ナノワイヤーとカーボンナノチューブの混合液に、スーパーで販売されているような普通の木綿を浸して製造する。ナノワイヤーは、木綿の表面によく付着するので、こうしておくと、生物を培養するように、20分ほどでナノコーティングされた木綿繊維のフィルタができあがる。これを走査型電子顕微鏡で見ると、木綿の繊維の表面にびっしりと細かい銀ナノワイヤーとカーボンナノチューブが付着し、フィルタを構成する繊維が導電材料でナノコーティングされているのが見える。

従来の浄水システムのフィルタでは、病原菌を狭い空間に閉じこめて捕捉して濾し取っていたので、除菌の効率を上げるために、目を細かくし、流す水の流速も遅くし、さらにポンプを用いて加圧もする必要があった。だが、この新しいフィルタでは、病原菌が含まれる水をフィルタの繊維の間に流すだけである。それだけでも、繊維の表面を覆った導電性のあるナノワイヤーやカーボンナノチューブに電流を流すと、病原菌はその繊維の間を通過するときに死滅する。

実験室での使用実験では、大腸菌を20 Vの電圧に数秒間さらすと、その98パーセント以上が死滅したという。フィルタは、上記の繊維を何層にも重ねて2.5インチの厚さにしていた。この新しいフィルタでは、病原菌を狭い空間に閉じこめるわけではないので、孔隙を大きくすることができ、従来の浄水システムと比較して、同じ時間でより多くの水を通過させることができる。

また、病原菌を狭い空間に閉じこめて濾し取っていた従来の浄水システムでは、フィルタの目詰まりが問題になっていたが、孔隙を大きくすることができるので、そのような問題も起こりにくい。さらに、それほど大きな電力を必要とするわけでもないので、エアロバイクで発電した電力や、小型の太陽電池パネルや、自動車のバッテリーでも動作させることができるという利点もある。

フィルタの材料となる木綿は、スーパーで販売されているようなごく普通の木綿である。また、銀の使用量もナノワイヤーという極微の組織に使用するので、最小限ですむ。このため、研究者たちは、製造コストを比較的安く抑えることができている。