シンガポールのTeo Chee Hean副首相は、シンガポール国際水週間(SIWW)が開幕した2010年6月28日、増大する水需要に応えるための水戦略と長期水計画をまとめたWater for All: Conserve, Value, Enjoy—Meeting our water needs for the next 50 years(みんなのための水:守り、大切にし、恵みをうける――つぎの50年のニーズに応える)を発表した。これは、同国の水道部門を統括する公益事業庁(PUB)が2060年までの新たな水供給計画をまとめたもので、国民や居住者に対し、水資源の自給率を高める必要性についての理解を求めている。
現在、シンガポールは国家4大水資源戦略により、多様な水資源から豊富で安定した給水を確保している。この戦略は、水を、国内での集水、輸入水、高水質の再生水であるNEWater、および淡水化の4つから得ようというものである。PUBの予想では、人口が増え、経済が成長するにつれて、水需要は向こう50年間に倍増し、そのおよそ70%は非国内部門の需要で、残る30%が国内消費の需要になるという。
2060年までに、シンガポールはNEWaterの生産能力を現在の3倍にし、水需要の半分をNEWaterでまかなう計画である。また、淡水化による増水能力をおよそ10倍にし、長期的には水需要のすくなくとも30%をこれでまかなうとしている。
国土面積がわずか710平方キロメートルという島国のシンガポールは、1滴の雨水も逃すまいと努力をつづけている。マリーナ、プンゴル、およびセラングーンに3つの貯水池が新設されたことで、2011年にはシンガポール国土の3分の2に降る雨が集水されることになる。
シンガポールの水供給の持続可能性を支える重要な柱はなんといってもNEWaterで、これにより、水の再利用が可能になった。2003年の開始以来、NEWaterの生産能力はしだいに増強され、2010年5月には5番目にして最大のNEWaterプラントがチャンギ水再生(下水処理)プラントの上部に完成した。
高度に処理された下水を水源とするきわめて清浄なNEWaterは、飲料水の国際基準を満たす水質で、おもにウェハーファブ、電子、石油化学などの工業施設に供給されている。NEWaterの供給量は、2003年に約20企業の日量400万ガロンだったものが、現在では360以上の企業に日量約6000万ガロンと、当初の15倍に伸びている。
シンガポールは島国であることから、海水の淡水化は水資源の確保策としては自然のなりゆきで、淡水化を国の第4の水源と位置づけ、2005年には逆浸透(RO)膜利用の淡水化プラントを完成させた。このSingspringプラントはPUBの初めての官民パートナーシップ(PPP)プロジェクトで、日量3000万ガロン(13万6000立方メートル)の水を供給している。