独ベルリン水道公社が再公営化を推進――背景には民間企業に対する利益保証を暴く市民運動

ベルリン水道公社(Berliner Wasserbetriebe、略称BWBが、11年前に民間企業に売却した株式の買戻しを進めている。その背景は以下の通りである。

BWBは1999年、49.9%の株式をドイツRWE(24.95%)ならびにフランスVeolia(24.95%)に約33億ドイツマルク(当時)で売却した。その際にベルリン市政府(Senat)と両社の間で交わされた契約内容はこれまで非公開とされてきたが、この中にRWEならびにVeoliaに対する利益保証が含まれており、これがドイツで最も高いと言われるベルリン水道料金の要因となっているのではないかという疑いが浮上。そこで市民団体ベルリーナー・ヴァッサーティッシュ(Berliner Wassertischが中心となり、「秘密契約はもうたくさん―われわれベルリン市民の手に自分たちの水を取り戻そう(Schluss mit Geheimverträgen – Wir Berliner wollen unser Wasser zurück)」と呼ばれるイニシアチブを展開してきた。このイニシアチブの中で、2010年初夏、契約内容の開示を求める国民請願書の署名運動が始まり、同年10月には必要数17万2000を大幅に上回る28万人のベルリン市民による署名が集まった。

その後、同請願書は受理され、ベルリン水道公社の一部民営化に関する契約内容開示を求める住民投票(Volksentscheid)の実施日が2011年2月13日に確定した。一方、世論の圧力の高まりを受けたベルリン市政府、RWEならびにVeoliaは2010年11月10日、約700ページにわたる契約内容をインターネットで公開している。ベルリン市は、高い売却価格と引き換えに、水道料金を年々引き上げることにより、つまり市民の財布を財源として2社が得る利益を保証していた。

なお、契約内容が公開されたことにより請願書の要求は実質的には満たされたわけであるが、すでにこの時点では州憲法上、手続きの取り消しは認められず、住民投票の実施は免れ得ない状況に追い込まれている。240万人のベルリン市民を対象に、1,200か所の投票所で約1万人の補助人員を擁して2月13日に行われる住民投票にかかる費用は、総額で約160万ユーロと見られている。

こうした一連の流れの中で、ベルリン市政府は電気・ガス・水道の管理・供給を再び市当局の手に取り戻そうとしている。2010年11月20日付けのドイツ”Spiegel”誌の報道によると、RWEは株式売却に関するベルリン水道局公社との話し合いに応じる意向を明らかにしたということである。一方のVeoliaは今のところ、本件に関する公式見解は発表していない。しかし、「法に準じた情報公開により、契約内容に関する憶測はこれで収束するはずである。これにより、今後の議論が客観性を帯びてくることを期待している。わが社は、水ビジネスにおける先端企業として、RWEならびにベルリン市当局との協力においてベルリン水道公社の発展に大きく貢献してきたものと自負している。それゆえ、これからもこの協力関係を継続し、さらに発展させていきたいと考えている」という、契約内容公開時のVeolia代表Michel Cunnac氏のコメントを見る限りでは、容易く株式売却交渉に応じる気配は感じられない。

タグ「」の記事:

2020年7月9日
米カリフォルニア州政府、飲料水中のマイクロプラスチックの定義を発表
2020年7月9日
米EPA、飲料水中の過塩素酸塩を規制しない方針を最終決定
2020年5月9日
米カリフォルニア州政府、飲料水中の六価クロムの新汚染基準策定に向けたワークショップを開催
2020年3月24日
米EPA、飲料水中のPFOAとPFOSの規制を予備決定
2020年2月23日
米州水規制規制機関協会ADERASA、上下水法規に関する第12回イベロアメリカ・フォーラム開催