アジア開発銀行(ADB)はこのほど、アジア太平洋地域における水危機に対処するため、水の利用効率の抜本的な改善と官民協力の推進などを求める向こう10年間の枠組案The Draft Water Operational Framework for 2011-2020(2011~2020年の水戦略の枠組案)をとりまとめた。この枠組案は、2010年10月12日にマニラのADB本部でひらかれた「水:危機と選択――ADBとパートナーの会議2010」(Water: Crisis and Choices – ADB and Partners Conference 2010)で議論された。会議には、世界中から政府、業界、シンクタンク、および非営利民間団体(NPO)の水の専門家600人以上が参加し、水に関するさまざまな問題とその解決策について話し合った。
都市化、工業化、汚染、それにエネルギー生産と食糧生産が競い合うようにして増えつづける需要が相俟って、多くのアジアの国ぐにでは、水のストックが危機的な状況にある。さらに、気候変動がもたらす異常気象は、氷河の融解や塩水侵入をひきおこし、これがいままでにない深刻な脅威となっている。2030年までには、水の需要に対して供給量が40%も不足し、アジア太平洋地域の食糧生産が危うくなるとともに、河川の水資源をめぐる国と国との緊張が高まることが予想されている。
水利用の効率化と官民協力の推進を:
水資源が先細りするなか、アジアでは水資源の非効率な利用が大きな問題になっている。都市上水道の漏洩だけでも、年間290億立方メートルもの水が失われている。アジアの淡水の大部分を使っている灌漑農業も、水利用効率のわるさでは定評があり、1990年以来、効率改善率は毎年わずか1%にすぎない。さらに、安すぎる水価格と、水利用の総合計画の欠如、ガバナンス力の不足、それに民間投資レベルの低さが相俟って、水資源の管理をいっそう難しくしている。
ADBが今回とりまとめた枠組案は、さまざまなステークホルダーとの協議の結果を反映したもので、先進的な効率のよい灌漑、都市上水道の漏水量の削減、費用対効果性の高い廃水処理・リユース技術の開発と応用など、水利用の効率向上に最も重点を置いている。
さらに、この枠組案は、現在はおもに政府の手で運営されている水道サービスのビジネスとしての将来についても触れ、効率を追求し、民間の投資と専門的知見を呼び込むべく企業体としての展望をひらくことに今後は大きな関心が集まるとしている。このことは、将来の官民協力の推進をうながす記述としても注目される。