マレーシア政府はスランゴール州の上水道事業について、同州が現在採用しているコンセッション契約による方式を改め、より緩やかな水道料金改正をともなうアセット・ライト(資産圧縮)モデルの採用による構造改革をめざすべきだとしている。これはDatuk Seri Peter Chin Fah Kuiエネルギー・グリーン技術・水資源大臣がこのほど明らかにしたもので、こうした構造改革をおこなった場合でも、コンセッションを保有している4社は、契約期間中はアセット・ライト・モデルにもとづいて事業をつづけることができ、上水道システムの運営と保守に集中することができると同大臣は述べている。
運営と保守に関しては、2006年水道事業法にしたがい、国家水道サービス委員会が全面的に監視するとともに、主要業績評価指数、運営コスト、および利益率は据え置くこととする。資金については財務省の100%子会社である非営利企業のAset Air Bhd(PAAB)が責任をもち、既存の水道資産と公債保有者などへの負債を引き継ぐなどする。
民営化の失敗との声に政府は反駁:
スランゴール州の上水道事業は、2005年1月1日に4社とのコンセッション契約により民営化されたが、これは利益を民間企業にもたらすのみで損失を州民が負担する仕組みにほかならないと批判する声もあった。
しかし、Chin大臣はこれに反駁し、コンセッション契約による民営化の取り組みは、以前は資金不足に悩まされてきたスランゴール州の上水道サービスの改善をめざすもので、民営化をしなければ同州は運営の費用に耐えられず、借金漬けといってもよいほどの状態に陥っていただろうと述べている。
州による全面買い取りは無理:
スランゴール州は、コンセッション契約を結んでいる4社の権利を全面的に買い取る意向を示していた。この買い取りについて、マレーシア政府は州の求めに応じて期限を遅めに設定し、2009年末としていたが、州はこの期限内に買い取りの合意に漕ぎつけることはできなかった。いっぽう、政府としては、スランゴール州の上水道事業の構造改革は急を要するとの認識から、今回のアセット・ライト・モデルをめざすという意思表明にいたったものである。
Chin大臣は、スランゴール州がめざしていた事業の全面買い取りというモデルだと、資産や株式の買収に費用がかかりすぎ、それをどうしても州民に負担してもらうほかはなくなると指摘している。