国際脱塩協会がブルーペーパーを発行――湾岸地域で海水淡水化による影響緩和を目指す

国際脱塩協会(IDA:International Desalination Association)が環境シンポジウムで得られた見識や、湾岸地域での海水淡水化による環境への潜在的影響を最小限に抑えるための提言などをまとめた「ブルーペーパー」を発行した。同報告書はIDAの作業部会による12か月間の成果をまとめたものであり、シンポジウムに参加した200名以上の政治家、科学者および技術者、淡水化プラントの運営者、膜技術に関わる産業、環境保護団体そして学術関係者らの対話も反映されている。

バーレーンで開催されたIDAのシンポジウムでは、海水淡水化プラントが湾岸地域に及ぼす潜在的な影響や可能な緩和対策を探るため、直接もしくは間接的に海水淡水化プラントに関わるステークホルダーに焦点が当てられた。IDAのLisa Henthorne氏は「増大し続ける人口および経済がそのほとんどを海水淡水化に依存しており、その海を健全に保つことの重要性は誇張しすぎることはない。政府やステークホルダー全体が包括的なプロセスにおいて協力し、ブルーペーパーが湾岸地域の環境面での社会福祉を保護するための活動に関するプラットフォームを築き上げる手助けになることを願っている」と語っている。

ブルーペーパーの主な内容は以下の通り。

Ÿ湾岸地域の環境に負荷を与えるような海水淡水化による影響に対処するため、科学的データに基づいた正確で最新の基準値が必要である。そのデータは透明性があり湾岸地域全域で容易にアクセス可能でなければならない。作業部会は、IDAが科学的データベースの構築を開始できるような方法を海水淡水化に関わる産業界や金融機関と共に検討する必要がある。別案として、IDAは技術的な評価やシステムの監査を行う第3者機関と共に情報共有センターとしての機能を担うこともありうる。

Ÿ湾岸地域は共有の資源としてみなされなければならず、海水淡水化による影響の緩和効果を広範囲にわたって得るために湾岸諸国が協力できるようなメカニズムが必要である。今後の推奨されるステップの一つとして、協力体制を整え、基準を設定するための枠組みを構築するために海洋環境保護のための地域機構(ROPME)との協力を模索することである。

Ÿ産業とそのステークホルダーが緩和対策の効果を判断するため、継続的な環境モニタリングや評価プログラムを実施する必要がある。

Ÿ海洋生物に影響を及ぼす恐れのあるプロジェクトの提案書の必要条件として、環境影響評価および社会的影響評価を義務化すべきである。

Ÿ環境対策の実施が増加することによって、新規プラントの建設や、現在稼働中のプラントの改修費用が増すことが予想される。推奨される環境対策に初期費用が掛かる場合、それらの費用は何も対策を講じなかった際に生じる長期的な費用負担と比較して評価されるべきである。

Ÿ産業界のステークホルダーだけでなく、顧客に対する教育も不可欠である。海水淡水化の果たす役割、生産される水の水質、そして環境保全や需要マネジメントの必要性を教育面からのアプローチする必要がある。

Ÿ環境に与える影響と海水淡水化の効果はバランスを取って考える必要がある。海水淡水化は淡水を供給するために不可欠であるが、いかなる工業プロセスにおいて環境面で何らかの影響が生じてしまう。環境への影響を緩和するための適切な措置も必要だが、すべての潜在的な影響を排除することは不可能である。

海水淡水化に関わる取り組みを機に、湾岸地域におけるその他の産業にも同様な緩和対策や健全な湾岸地域の環境づくりの誓約を促す。

タグ「」の記事:

2019年12月20日
チリの銅開発公社Codelco、丸紅のコンソーシアムが落札していた淡水化プラント建設の入札をキャンセル
2019年10月15日
チリの銅公社Cochilco、2018年度の銅鉱山での地表水、海水、再利用水の使用状況を発表
2019年7月27日
ラテンアメリカ淡水化及び水の再使用協会ALADYR、ペルーでの淡水化推進を強調
2019年7月24日
太陽光蒸気発生システムでほぼ100%の脱塩を実現――モナシュ大学
2019年6月20日
チリの銅鉱山会社AMSA、5億米ドルの淡水化プラントを建設すると発表