米加州のサンディエゴ市、廃水から飲料水を生み出す画期的な水プロジェクトに着手

米国カリフォルニア州のサンディエゴ市のもっとも新しい公益事業施設は、廃水を市の新規の飲料水源に変えるためのものである。

サンディエゴ市のJerry Sanders市長は2011年6月30日、以前は心配していた廃水の飲料水への変換の実行可能性を試験するパイロット・プロジェクトを開始した。

同市の1180万ドル(約9億6000万円)の「浄水実証プロジェクト(Water Purification Demonstration Project)」は、カリフォルニア州の公衆衛生局に監視されて少なくとも2013年まで実施される。一般の人々は、同市の公益事業局に電話するか、同市のウェブサイトからオンラインで登録すれば、見学することができる。

Sanders市長は、最初はこの試験施設に反対し、2007年に市議会が承認した計画の開始に拒否権を発動しさえした。このとき同市長は、大規模な事業のコストに懸念を表明し、市民は「トイレから蛇口へ(toilet-to-tap)」と冷笑してこの構想を支持していないと述べた。しかし、市議会は、すぐに市長の拒否権をくつがえして、この計画を守った。

こういうことがあったにもかかわらず、2011年6月30日に市長は、市当局の最大の課題の1つとしてこの新規水源の可能性にかけたのである。なぜなら、同市は、ほとんどコロラド川とサクラメント-サンウォーキン川デルタから輸入した水のみに依存しているからである。これは、次第に費用が増えてゆく水源だが、同市はこのことについてほとんどなにもできないのである。

市長のスポークスパーソンAlex Roth氏は、「市長は、科学に代弁させようとしている。市長の最初から今日までの関心事は、このプロジェクトが科学的に妥当で安全であることの確認を求めているだけである。おそらく、このパイロット・スタディがこのようなことに答えを与えてくれると考えている」と述べた。

市長は、この新規水源のアイディアに共感を寄せたが、住民もそうである。全郡的な世論調査では、2005年の水不足のなかったときは28 %の住民しか超清浄なリサイクル水の蛇口での使用を支持していなかったが、水不足になっていた2009年には63 %が支持し、最近の調査では67 %が支持していることが示された。

現在の市の計画では、1日当たり100万ガロン(約3,800 m3)の再精製水が生産されることになっているが、一滴も貯水池には送水されない。しかし、このプロジェクトの施設が本格的な処理施設にまで拡充された場合、再精製水は、おそらくレークサイドの近くにあるサンビセンテ貯水池に送られて、ほかの水源の水と混ぜられることになるだろう。

環境保護団体、消費者、企業、労働者、開発業者、納税者、技術者の組織の提携組織である「水信頼性連合(Water Reliability Coalition)」は6月30日、サンディエゴ市の実験を支持する声明を発表した。

この連合のリーダーであるSan Diego Coastkeeper(海岸の守り手)という団体のGabriel Solmer氏は、「サンディエゴは、この安全な水を得るための選択肢を検討する初めての市ではない。南カリフォルニア地域において、Irvine Ranch水区では、30年を超えてリサイクル水を配水してきたし、オレンジ郡では、住民が飲料水源として用いている地下水源に高度に純化されたリサイクル廃水を加えてきた。この技術は、世界中で用いられている」と述べた。

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