ハンガリー南西部のペーチ市がSUEZ Environmentと結んだ水道事業の契約を同市が2009年に破棄し、それがもとでSUEZがペーチ市を相手取って裁判で争っていたが、ハンガリー最高裁は2011年9月27日の判決で、ペーチ市による契約の一方的破棄は違法であるとの判断を示した。最高裁のこの判決は、ペーチ市議会による契約打ち切りの決定は適法であるとのハンガリー商工会議所の2010年3月の裁定を破棄するものである。
今回の最高裁判決はまた、ハンガリー商工会議所による仲裁に手続き上の欠陥があるとの理由で新たな仲裁裁判の開始を命じたTolna県裁判所の判断を支持するものでもある。SUEZ Environmentとペーチ市のあいだの法廷での争いは、2009年10月にSUEZ側からの訴訟提起ではじまった。その発端となったのが、SUEZと結んでいた市の水道会社Pécsi Vízmûの経営契約をペーチ市当局が打ち切り、水道事業の管理権をSUEZから取り上げたという出来事である。Pécsi Vízmûは、ペーチ市の水道事業が1995年にZsolt Páva市長のもとで部分民営化されたときに設立された。
訴訟にいたるまでの経緯:
1995年、SUEZ Environment――当時の名称はLyonnaise des Eaux――は、Pécsi Vízmûの株式の48.05%を取得し、25年間の経営権を手にした。ペーチ市の持ち分は50.05%で、過半数を維持し、残りは近隣の小規模自治体が保有した。その後、何年にもわたって、SUEZはこの水道会社にかなりの投資をおこない、黒字経営にまで漕ぎつけたが、それにともなう水道料金の値上げは、ペーチ市の水道水をハンガリーで最も高価なものにする結果となった。
2009年9月、再選されたPáva市長は、巨額の負債に苦しむ市の財政を建て直すための方策の一環として、Pécsi Vízmûを全面的に市の管理下に置く計画を発表した。これをうけて市議会は、20日間の交渉期限を設けてSUEZとの契約を解消し、SUEZの持ち株をすべて買い取ることを賛成多数で議決した。ペーチ市もSUEZも、交渉の努力はしたとしているが、20日経っても合意は得られず、特殊法人として新設されたTettye Forráshz Zrtが、新たに雇ったガードマンらに守られてPécsi Vízmûの経営権を実力で奪取した。
損害賠償をめぐる両者の攻防:
独立系のコンサルティング会社Compass Lexeconの推計によると、ペーチ市がSUEZに支払わなければならない賠償金額は、損害賠償金と未払い利息の合計で2660万ユーロ(約29億4000万円)になる。ペーチ市の顧問弁護士Ivan Szabóは、同市はこの見積額を受け容れず、支払う意思もないと述べている。これに対してSUEZは、この金額が30日以内に支払われない場合はウィーン国際仲裁センターに提訴するとしている。