ロードアイランド大学で海洋化学を専攻するRainer Lohmann准教授ら、40人のボランティアを含むチームが、ナラガンセット湾の海水から、きわめて微量のトリクロサン類、アルキルフェノール類およびポリ臭化ジフェニルエーテル(PBDE)類を検出した。これら物質は産業プロセスやパーソナル・ケア製品によく使われているものだが、環境保護庁(EPA)の通常のモニタリング対象とはなっていない。
海水中の有害物質調査はナラガンセット湾内の27箇所で実施され、そのいずれの調査箇所からもこれら物質が検出された。Lohmann准教授らは、今回はたまたまこの3種類の物質について検査しただけだが、このほかにどのような物質が海水中にあるのか、また、それら物質の複合的な影響がどのように出るのかが問題だと話している。
新懸念汚染物質への曝露は「ライフスタイルの隠れたコスト」:
Lohmann准教授らが海水から検出した3種類の物質は、いずれも「新懸念汚染物質」と呼ばれているもので、そのうちトリクロサン類は多くのパーソナル・ケア製品に抗菌剤として使われており、ヒトと環境にリスクをもたらすことが知られている。アルキルフェノール類は洗剤としてひろく使われており、生殖系を攪乱することが知られている。また、PBDE類は広範な消費者向け製品に難燃剤として使われていたが、ヒトと野生生物に長期的な悪影響があるという理由で現在では一部の州で禁止されている。
こうした新懸念物質への曝露を、Lohmann准教授は「ライフスタイルの隠れたコスト」と見ている。「こまったことに、ある化学物質の使用を禁止すると、それよりよいものかどうかがまだわからない新しい物質を産業界は持ち出してくる」とLohmann准教授はいう。
PBDE類、メチルトリクロサン、およびトリクロサンの濃度が最も高かったのは、ブラックストーン川、ウーナスクアタケット川、およびナラガンセット湾北部だった。また、アルキルフェノール類の洗剤については、種類によってはほとんどどの測定点で濃度があまり変わらないものもあった。
これらを含めた化学物質への曝露について、Lohmann准教授はこう述べている。「思春期早発化からある種の疾病にたるまで、社会に見られる傾向の多くは、化学物質への曝露によるものである可能性がある。化学物質への曝露によってホルモンの分泌が誘発され、体の正常な機能が攪乱される。われわれにはそれに対する抵抗力がない」