曽蔭権(Donald Tsang)香港行政長官は、2011年10月12日、施政方針演説を行った。この演説の中で、曽行政長官は海水淡水化プラント建設等、水需給に係る方策を打ち出した。
曽行政長官によれば、行政区内において急増する水需要に対応するため、香港の新界東部にある将軍澳に海水淡水化プラントを新設する予定だという。施設は10ヘクタールの敷地に建設され、今後10年以内に完工、稼働すれば香港行政区の水需要の5%相当量を供給することが見込まれている。
現在、中規模海水淡水化プラントの建設における実現可能性およびコストパフォーマンスを評価するために、詳細な調査およびフィールドワークが実施されている。また政府筋によると、今後、1000世帯を対象とした各家庭の水利用状況の調査が予定されているという。施設建設に際しては、関連調査に2年、建設に7年がかかるとみられている。
また、今後3年間にわたって東江(広東省を流れる河川)から水を引くことに関し、広東省政府の合意を取り付けるため政府は交渉を進めている。政府筋によれば、東江から香港まで水を引くのには1m3あたり9香港ドル(約89円)、海水淡水化による造水には12香港ドル(約118円)のコストがかかるという。なお、技術が成熟するにつれ、海水淡水化にかかるコストは下がるとみられている。
この新たな計画に対し、環境NGOグリーンピースは水資源枯渇問題の根本的原因の解決とはならないとする。珠江デルタでは、広東、香港の一般家庭および産業用途のため、かなりの水需要があり、新たな手段を模索し水供給の安定化を図る必要があるとグリーンピース幹部は指摘している。