タイ、地下水法改正を検討――汚染者負担の原則を盛り込むために

近年の工業発展や都市化を受け、2011年10月現在、タイ環境天然資源省地下水資源局は、仏暦2520年(1977年)に制定された地下水法(Groundwater Act B.E. 2520(1977))の改正を提案している。この提案は、汚染者負担の原則に基づき、地下水資源に損害を与えた者に対してその修復コストを負う責任を課すためのもので、現在の法律には、この概念が盛り込まれていない。

1977年、タイは、アジアでもいち早く地下水法を制定した。全66条からなる本法は、地下水資源の保全を目的に制定されたものであり、地下水資源の利用や井戸掘削の管理、地下水の涵養等について規定している。同国では、産業界による地下水の過剰採取によって、首都バンコクおよびその周辺地域で地盤沈下が引き起こされており、この問題に対処するため、本法は、1992 年、2003 年に2度改正が行われた。本法の構成は次のようになっている。

第1章:地下水委員会の設立
第2章:地下水開発ライセンス
第3章:地下水開発ライセンス保持者の責任
第4章:当局
第5章:地下水開発ライセンスの更新と失効
第6章:罰則

本法に基づき、同国では、地下水採取量がその涵養量を上回る “地下水管理区域(Critical Groundwater Zone)”が指定されている。また、井戸の掘削や地下水の私用目的における使用に対するライセンス制度が導入され、地下水の取水制限値や使用料金も設定されている。

汚染者負担の原則を盛り込むため、2011年10月現在、地下水法第36条に以下の文言を追加することが検討されている。

「地下水関連事業を行う/井戸を所有する者で、汚染物漏出や汚染拡散あるいは地下水やその他の天然資源、環境、財産、市民の健康に有害な影響を与えたものは、その補償や損失コストに対する責任を負う。このコストには、汚染の削減、地下水資源や環境あるいはその他の天然資の修復に際して政府が費やしたコストも含まれる(第36条3項)」

この新たな条文が追加されれば、地下水資源局は、地下水汚染者を自らの手で訴追することができるようになる。今のところ、同局にはこの権限がなく、問題を公害管理局(PCD)に通知して、PCDが国家環境保全推進法に基づいて訴追する形になっている。

また、2011年10月、タイでは数十年ぶりの大洪水が発生し、深刻な被害がもたらされている。これを受け、同国では水に特化した新たな省庁の設置が検討されており、この新たな省には、水資源局や地下水資源局、かんがい局、公害管理局や海事局のいくつかの部門等を含めることが提案されている。

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