中東・北アフリカ地域(MENA:Middle East and North Africa)における、膜バイオリアクター(MBR:Membrane Bioreactor)の地域市場は最も急速な伸びをみせている。MENAでは、世界最大規模のMBRシステムの発注が見込まれており、関連分野では競争が激化すると予想されている。深刻な水危機をよそに、新技術の受け入れにおいてMENAは先駆的存在であった。MENAにおけるMBR市場は、2015年までに年平均成長率(CAGR)17.77%、その市場規模は2億8030万ドル(約213億円)に到達すると予測されている。
MBRシステムの主要な購入元は商業分野である。商業分野は、MENAにおける都市化や不動産の発展を主な要因としてMBR需要の原動力となってきた。湾岸協力会議(GCC:Gulf Cooperation Council)諸国では、排水の高度処理システム発展の中心は石油産業やガス産業であった。MENA地域は既に1日当たり2万m3以上の処理能力を有する設備の導入を見据えており、激しい水ストレスや再生水への強い要求を考慮すれば、さらに容量の大きなプラントも建設されることになるだろう。行政部門や産業分野においても相当数のMBRシステム導入が検討されている。
コンサルタント会社のFrost & SullivanのMENAのMBR市場に関する報告書によれば、生活排水および工業排水のリサイクルやリユースの潜在的需要を考えると、同市場におけるMBRのビジネスチャンスは相当なものだという。MENAに属する国々の中でも既に成熟期を迎えつつあるUAE市場では、経済危機とインフラセクターの減速による影響があいまって、現在市場は停滞した状態にある。一方、MENA内のいくつかの国々では非常に規模の小さいMBRプラントの発注が始まっている。
Frost & Sullivanのアナリストによれば、MENAにおけるMBR市場は、処理能力が1日当たり5000~50000m3にかけての中・大規模プラントのプロジェクトが多数実施されるのに伴い、今後5年から10年の間に高い成長軌道を描くことが予想されている。同アナリストは、大型プラントについてはUAEおよびGCC全域で、小型プラントおよび中型プラントについてはアルジェリア、リビア、イランなどで建設されるとの見解を寄せている。
Frost & Sullivanによる同報告書は、プロジェクト管理、競争力のある部品調達、デザインおよび技術の面で優れた能力を有する企業には成長の見込みがあるとの指摘をしている。MENAに注目する上で鍵となる国は、サウジアラビア、オマーン、エジプト、カタール、クエートである。これらの国々は、生活排水処理能力の拡大を図る同時に、産業分野の大幅な発展に伴う経済の多角化が進行しており、こうした動きは水処理関連企業に多くの機会を与え得る。持続可能でグリーンな成長を求めて、MENAではスマートシティ構想も進められている。スマートシティで生活排水や汚水を高度浄水処理するにあたり、MBRは中心的な働きをするだろう。