縮小する世界の水供給に対する懸念が高まる中、干ばつの発生するイスラエルで、将来的に水供給の余剰が発生するという予測がされている。この楽観的な見通しは、イスラエルの国営水企業であるMekorotの75周年の記念式典にて報告されたもので、Mekorotによると、イスラエルは海水淡水化により、すべての貯水池における貯水率を回復することができ、今後8年以内に確固たる供給余剰を享受するという。それがもし現実のものとなれば、水不足が叫ばれる状況下において、イスラエルは水の輸出国に転じることができる。
海水淡水化の先導的役割を担っているイスラエル外務省が発表した文書の中で、Mekorotの前CEOであるBooky Oren氏は、「イスラエルは国土の3分の2が乾燥地帯であり、必要に迫られた結果、海水淡水化を推し進めている。また、人口は増加しており、水の需要が高まっている。それがイスラエルを新たな改革へと推し進める原動力になっている」と語っている。今後数年間の見通しは明るいものの、イスラエルは現在、度重なる冬期の干ばつの影響で水の供給不足の状態にある。そのことが海水淡水化の必要性を高め、水の余剰供給へ向けたイメージをより鮮烈なものにしている。
イスラエルにおいて水が供給余剰になるという予測は、現在年間6億m3の造水量を誇る海水淡水化プラントのみに起因するものではない。現在の貯水池の補充や沿岸部の帯水層からの汲み上げが減少していることなどもその要因となっている。Mekorotの式典では、帯水層からの過剰な汲み上げが地下水の塩水化を招き、水の処理が難しくなることについて言及がなされた。イスラエルの水事業の最新報告によると、帯水層の39%のみが良好な状態にあり、11%は使用不可能であるという。
そのような問題があるにもかかわらず、イスラエルで水の約半分を供給しているMekorotは、20年間にわたり水質は著しく改善され、世界保健機関(WHO)の提示する基準を大幅に上回っていると発表した。WHOは5%という病原体や寄生虫の制限値を推奨しているのに対し、2010年にMekorotのサンプルから検出された不純物はわずか0.07%であった(1991年は6.5%)。さらに、化学物質により汚染されていたのは僅か0.03%であった。
水質の改善に加え、水の価格も20年の間に改善された。現在、イスラエルのWATECカンファレンスおよびエキスポの議長を務める前Mekorot代表のOren氏は、20年前まで1m2あたり2ドルだった水道料金が50セントまで低下したと説明した。同氏は、世界の水市場で台頭するイスラエルの実力の起爆剤となる技術、特に廃水のリサイクルやエネルギー削減のための手法に信頼を置いている。このような将来を見通す考えは、イスラエルにまもなく恩恵をもたらすかもしれない。