アラブ首長国連邦(UAE)では、各首長国の水道当局によって浄水の製造方法が異なるため、水道水の質に差異が生じていることが現地紙“The National”の3か月にわたる調査でわかった。
同紙が2012年3月18日に報じたところによると、2011年12月から2012年3月にかけて行われた同調査では、UAE全7首長国の8世帯からサンプリングされた水道水の化学成分および物理品質が実験室にて検査され、その結果が、世界保健機関(WHO:World Health Organization)および湾岸規格機構(GSO:Gulf Standards Organization)が定める飲料水基準と比較されたという。
この結果、アブダビ、アルアイン(アブダビ首長国第二の都市)、ドバイ、ラースアルハイマで採取されたサンプルは基準値の範囲内であった。一方、シャルジャ、アジュマーン、ウンムアルカイワインのサンプルは全て基準を満たしていなかった。この主な原因は大量の溶存塩である。またフジャイラのサンプルは井戸水であるため、他の地域と一様には比較できなかった。これは、井戸水は直接地下から引いており、海水を脱塩(淡水化)したものとはその製造プロセスが異なるためである。
本調査はわずか8つのサンプルのみであるため、科学的に正当な結論とは言えないが、さらなる調査に向けての出発点となりうるものである。
アラブ首長国連邦のほとんどの地域では、海水中の溶存塩分を除去することで水を造っているが、地下水を使用している地域もある。国際脱塩協会(IDA:International desalination Association)の代表であるCorrado Sommarive博士はこの結果に対して、淡水化された水とより塩分の濃い井戸水が混ざり合ったため、もしくは脱塩装置のメンテナンスや操作方法に問題があったためであろうとの認識を示している。
この問題がいかに深刻であるかを断定するためには、長期間にわたり継続的な試験を行う必要がある。Sommariva博士によると、良品質の飲料水を製造するうえで、淡水化それ自体は安全かつ信頼できる方法であるが、良い水質を常に確保するための一つの方法として、製造元とは独立した団体による監視が挙げられ、これはすでにアブダビとドバイで実施されているとのことである。