イギリス水道事業規制庁(Ofwat)は、2012年10月末に、水道事業許可条件を変更して料金と物価との連動をなくし、競争原理を導入するとともに、それに従わない企業については競争委員会の規制にゆだねるとする提案をおこなったが、これによってUnited UtilitiesやSevern Trentなどの水道事業企業の株価は10%以上下落した。
しかし、Ofwatは同年11月20日の市場の大引け後に突然、この提案についての「説明」と称する8ページの文書を公表した。この文書の意図しているところは明らかに、Ofwatの提案が――債券市場においても株式市場においても――企業の信用力を弱めるのではないかという投資家の募る不安をやわらげることにあった。
この説明文書でOfwatは、水道事業企業の売上の平均51%を占めるふたつの独占サービス――上水の配水と下水の集水――については今後も小売物価指数(RPI)にリンクした価格管理をおこなうことを強調している。これをうけて翌11月21日、水道事業企業の株価はFTSE 100社指数の上昇を上回る勢いで反発した。
「柔軟性」という言葉に市場が反応
Ofwatは説明文書のなかでこう述べている。「水道事業部門が直面している課題は何かというと、それは、持続可能な水供給のための新しい革新的な方法が必要だということである。水道事業の許可には柔軟性が必要である。柔軟性は、変わりゆく状況に規制機関としてのOfwatが適応していくための重要なツールだからである」
この「柔軟性」という言葉に、投資家やアナリストらが敏感に反応した。JP Morganのアナリストらは次のような見解を示している。「競争委員会うんぬんということに関するOfwatのスタンスが軟化したことで、短期的な悪材料のリスクが減少した。これには、イギリスの水道規制が今後も良識ある穏当な路線を歩みつづけることを市場に再確認させる作用があるはずだ」
RBS Capital MarketsのJohn Muskもこれに同意し、Ofwatの説明文書は「妥協点がみつかる可能性を示している」と述べている。
こうしたOfwatの説明文書をうけて、翌2012年11月21日、United Utilitiesの株価は12.5ペンス(約16.5円)高の673.9ペンス(約891円)に、また、Severn Trentの株価は22ペンス(約29円)高の1570.9ペンス(約2077円)に急騰した。しかし、South West Waterを保有するPennonは取り残されたかたちで、0.5ペンス(約0.7円)安の608.5ペンス(約804円)にとどまった。