フィンランドでナノ多孔膜の新製法を開発――大幅なコストダウンを達成

ヘルシンキのArcada University of Applied Sciences(アルカダ応用科学大学)のエネルギー・材料工学科の研究チームが、膜生産の画期的な技術を開発した。これは同大学のトラックエッチング膜研究チームによるもので、ナノスケールの細孔のある多孔膜を新しい方法でつくることに世界で初めて成功した。
この技術の最もすぐれた点は、コストが現在の方法の半分以下ですむことである。エネルギー・材料工学科を率いるMikael Paronen博士は、この新技術はきれいな水を得る上で世界的に重要なものになるだろうと述べている。国連によると、10億人を超えるひとびとが、きれいな水にアクセスできない状態にあるという。
汚染水であれ、塩水であれ、それを飲み水に変える技術はすでにある。しかし、現在の浄水法は、費用がかかりすぎるか、あるいはおそろしくエネルギー集約度が高いかのどちらかである。
さまざまな水処理法のなかで、ナノ多孔膜をベースにした方法が技術的には最も将来性があるが、これは最も費用がかかる方法でもある。同大学によると、ナノ多孔膜には1平方メートルの価格が数千ユーロにもなるものがあり、このため、応用分野はごく限られているという。

トラックエッチ法をベースにした新製法

ナノ多孔膜の新製法の開発の動機について、Paronen博士はこう述べている。「われわれの出発点は、生産コストを大幅に下げるにはどうしたらよいか、ということだった。研究チームは新たな製法の探求へと進み、そのなかで、これまでの経験とさまざまな学術文献とがうまく結びついた」
この新製法でつくる膜は、不純物をその大きさや化学的性質によって水から分離することができる。こうした能力をもつ膜の製法として知られている最良のソリューションは、トラックエッチ法である。研究チームが新たに開発した製法も、部分的にはこれと同じ原理をベースにしているが、ちょっとした変更を加えることで、費用対効果性の高い製法に仕上がっている。
こうして開発された新製法は、膜の価格を大幅に下げることができるため、将来の応用範囲もぐっと広がってくる。最大の応用分野としては、きれいな水の生産、それに、たとえば貴重な物質や有害物質を分離するための、産業用プロセス水処理がまず考えられる。

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