「インドにおける官民パートナーシップ(PPP)による水道プロジェクトの成功は、政治の全面的な支援なしにはありえない。政治の支援はPPP契約によるプロジェクト実施の全局面において必要で、公共部門は政策変更などから民間事業者を守らなければならない」
2013年10月9日にインド産業連盟トリベニ水研究所とアメリカ国務省国際開発局が共催した会議で、Veolia Water IndiaのPatrick Rousseau会長兼社長はこう語った。
インドのPPPで民間事業者が直面する問題
会議の場で、Rousseau会長はつぎのように述べた。「民間事業者の参入によってプロジェクトにもたらされる大きなメリットとして、今日では、技術エンジニアリング上のメリットのほかに、社会エンジニアリング上のメリットがある。水を常時供給するためのPPPプロジェクトは、それによって利益をうける市民の支持なしには成功し得ない」
Veoliaは、インドで短期および長期の水プロジェクトを現在実施中のいくつかの民間事業者のひとつだが、水道事業の民営化にまつわる論争に巻き込まれることがよくあるという。Rousseau会長は、論争が起きるのは理解ないしは解釈のちがいによるものだと考えている。たとえば、PPPといえども水道インフラ資産は公共部門の所有であること、また、水道料金も公共部門の責任で決められることが、正しく理解されていない場合がある。
地元のパートナーと組んで水を常時供給する25年契約のプロジェクトの実施地であるインド中部のナグプル*では、PPPプロジェクトの導入を決めた当の本人たちからの反対に遭ったという。この件について、Rousseau会長はこう述べている。「われわれは1日に1キロメートルの配水管を敷設する予定を立てていた。これは、現場周辺に大変な迷惑がおよぶ工事だ。それで、実際に工事がはじまると、それまではプロジェクトに賛成していた地方議員たちが反対の声をあげはじめた。自分たちの地元が迷惑をこうむることになるからというのだ」
また、これはいくつかのプロジェクトで見られたことだが、自治体が水道のコストを100%回収しようと、いったんは料金の値上げを決めたものの、その決定を下した当の本人たちが、いざ実際に料金が上がるとなると反対にまわるということがある、とRousseau会長は言う。
同会長は最後にこう締めくくった。「PPPは、政治の支援なしには成功はありえない。われわれには政治的な代弁者が必要だ。われわれは、意思決定者らの政策変更から保護される必要がある」
* EWBJ42号に関連記事有り「Veolia Waterインド法人と現地インフラ・エンジニアリング企業のJV、ナーグプル市の上水道長期運営・保守契約を獲得」