インドネシアの水道事業の要改善点――オーストラリア水協会の会長が指摘

インドネシアが飲用に適する高水質の水道水を供給できるようになるためには、水の管理方法と管理能力の両面で、改善すべき多くの問題がある。このほどジャカルタを訪れたオーストラリア水協会(AWA)のJonathan McKeown会長はこう指摘し、つぎのように述べた。「インドネシアでは、ガバナンスの改善の余地が大いにあり、また、キャパシティ・ビルディングの必要性もたしかにある」
McKeown会長のジャカルタ訪問は、東南アジア諸国とのビジネスを活発にするためのオーストラリア政府のプログラムの一環として、水処理および水供給の事業を所轄するインドネシア政府の要人らと面会するためのものだった。
同会長によれば、AWAは、インドネシアの水ビジネスのさまざまな分野をくまなく見渡し、そのなかで、オーストラリアの培ってきた専門的知見を活かして、インドネシアの地域の水道ユーティリティ――各県の水道公社(PDAM:Perusahaan Daerah Air Minum)――に対し、きれいな水をより効果的に供給できるよう手助けできる分野はどれとどれかを見きわめようとしている。

ガバナンス

McKeown会長は、ガバナンスという点では、さまざまなレベルの行政機関同士の、また上水道を受け持っている各PDAMと行政機関との協力のしかたに、改善の余地があると見ている。
同会長はまた、こうも述べている。「われわれがここにきたのは、インドネシアの水道事業者がオーストラリアの持つ経験とスキルをいくらかでも利用できる機会を見つけるためだ」

インフラ

McKeown会長は、インドネシアには地方のさまざまなPDAMが運営している何百という浄水施設があるが、それぞれがあまりにも小規模で、施設の経営についての研修をおこなおうにもそれに必要なだけの資金を呼び込むことのできる事業規模に達していないことを指摘している。
また、タイやマレーシアと比べても、インドネシアにはきれいな水を家庭に届けるためのインフラの支援体制が欠如している。マレーシアやタイの大都市では、浄水プラントや下水網など、水インフラの整備がインドネシアよりも進んでいる。もうひとつ、インドネシアの水道事情をいっそう困難にしている要素は、国土がマレーシアやタイとくらべてはるかに広いということである。
インドネシア水道協会のデータによると、同国ではおよそ900万戸――世帯、企業、工場などを含む――が約400のPDAMから上水道サービスをうけているにすぎない(地域ごとのPDAMの数は下図の通り)。また、上水道の普及率は、都市部では42%、農漁村部ではわずか11%にすぎない。
インドネシアの水道協会などとの協力関係の構築についてMcKeown会長は、具体的な計画はまだないものの、ジャカルタでのいくつかの会合で、AWAのアイディアを歓迎する声が各方面から聞かれたと話している。

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図 インドネシアにおける地域ごとのPDAMの数

水道料金

投資の観点からいうと、水道の経済面での規制、特に料金の設定方法にこそ真の課題があるのかもしれないとMcKeown会長は言い、これについてつぎのように述べている。「水道ユーティリティが経済的にやっていける収入が得られるような料金でなければならない。さらにいえば、水の供給量を増やし、水質を改善し、水道管などのインフラを維持するためにユーティリティの経済力を高めることのできるものでなければならない」
インドネシアでは、水道料金の規制は地方政府がおこなっているため、地域ごとに料金が異なる。たとえば、西ジャワ州バンドンでは、中規模の世帯の水道料金は1立方メートルあたり2600ルピア(約23円)からスタートする。いっぽう、ランプン州では、中規模世帯の水道料金は1立方メートルあたり3380ルピア(約30円)である。
McKeown会長は、電力や通信などのユーティリティと水道ユーティリティとのあいだには、経済面で大きなギャップがあると言う。

ボトル水

ジャカルタなどの大きな都市では、ほとんどの外国人や中流家庭は飲用にボトル水や大きな容器にはいった水を買うのがふつうである(インドネシアにおけるミネラルウォーターの販売額およびその予想値は下図の通り)。
「彼らは世帯の収入の何パーセントかをボトル水の購入にあてる。これは、オーストラリア人が(飲用に適した水質の)水道水に支払う額の何倍にものぼる」とMcKeown会長は言う。

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図 インドネシアにおけるミネラルウォーターの販売額(2011年~2015年は予想値)
(出典:Euromonitor International, “Bottled Water in Indonesia”)

海外からの投資

インドネシアの水道事業への海外からの投資について、インフラ開発企業であるNusantara InfrastructureのDanni Hasan取締役は、料金という要素が外国投資家の関心を削ぐという局面に遭遇したことはないとして、つぎのように語っている。「最近、ジャカルタの浄水プラントが売りに出され、日本、フィリピン、それにアメリカからも、多くの応札があった。インドネシアの水道事業への投資は、まちがいなく関心を呼んでいる」
Danni Hasan取締役はさらに、ランプン州で官民パートナーシップによる浄水プラント建設・運営プロジェクトの入札が2013年にあり、それを日本の共同事業体が落札したと語った。
同取締役によれば、インドネシアの上水道プロジェクトには投資額の18%の利益が約束されているものもあり、これは投資家にとってはじゅうぶん魅力的な話だという。
なお、Nusantara Infrastructureは、バンテン州タンゲランの浄水プラントを運営している共同事業体、Tirta Kencana Cahaya Mandiri(TKCM)の構成企業のひとつで、この共同事業体を通して水インフラの事業を展開している。

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