Hyfluxがアフリカ地域進出への積極的姿勢を示している。2014年4月には、南アフリカのエンジニアリング会社Murray & Roberts社と覚書を締結し、アフリカ市場への共同展開を発表した。また3月には、ジョイント・ベンチャー(JV)を設立して、ナイジェリア市場に進出した。以下ではそれぞれの概要を説明する。
南アフリカのMurray & Roberts社と合意覚書を締結
2014年4月7日、Hyfluxの完全子会社であるHydrochemが、南アフリカのエンジニアリング・建設会社であるMurray & Roberts社と合意覚書を締結した。この合意締結により両者は、サハラ砂漠以南のアフリカ地域にて水処理プロジェクトの受注を目指すという。
この発表に際してHyfluxのCEOであるOlivia Lum氏は、期待を込めて次のように述べている。「この合意覚書は、2社がそれぞれの経験と能力を活用することで、膜処理による海水淡水化、再生水、鉱業廃水処理、工業廃水処理の分野において共同で案件獲得を進めるための道を開くものである」
TolaramとJVを設立し、ナイジェリア市場に展開
また2014年3月26日には、こちらも完全子会社であるHyflux Internationalを通して、Tolaram Corporation社とJVである「Yewa Water Company」を設立することで合意した。このJV設立は、ナイジェリアでの膜処理を用いた水処理プラントの案件獲得を狙ったものである。なおJVの株式については、現在は2社が等しい保有比率となっているが、今後はYewa Water Company自身が過半数を所有することになるという。
今回ともにJVを設立したTolaram社は、シンガポールに拠点を置く、マルチ・インダストリー企業である。食品、製紙、繊維、エネルギー、物流、不動産を手掛けており、ナイジェリアでは食品流通や物流サービスに加え、インフラ整備事業をすでに展開している。
EnviXコメント
Hyfluxは、2004年にアルジェリアに進出して以降、同国を中心にMENA(Middle East and North Africa)地域で淡水化プラント事業などを受注してきた。2008年には、アルジェリア西部のOranにて、日量50万m3にもおよぶ淡水化プラント建設を受注した。
同社の売上推移を見ると、2009年および2010年は、全売上に占めるMENAでの割合が6割以上を占めていることが分かる(下図)。しかしながら、その後は急速に減退しており、2013年にはわずかに4%を占めるだけであった。MENA地域特有の情勢などもあるため断定はできないものの、同社が苦戦しているものと予想される。
このような背景もあり上述した今回の2件のトピックは、アフリカ市場全体への展開強化はもちろんのこと、地域的にも近いMENA市場での地位回復を目論んだものと推測される。
図 Hyfluxの地域別売上推移
(出典:Hyflux Annual Report 2013)
この他にもHyfluxの最近の動向として興味深いものは、同社の事業別の受注額割合の変化である(下図)。2005年~2008年はEPCの受注が全体の受注額の多くを占めていたものの、O&Mの受注額が徐々に伸びはじめ、2009年以降はO&Mが過半数を超えている。将来にわたって安定的な売上を確保しようとするHyfluxの戦略がみてとれる。
図 Hyfluxの事業別の受注額割合の推移(2005年~2013年)
(出典:Hyflux Annual Report 2013)