イタリア南部バジリカータ州コルレート・ペルティカーラのテンパ・ロッサ油田の石油採掘サイトで、GEの最新技術――先進的蒸発器を用いた無排水(ZLD:zero liquid discharge)技術――を使って油汚濁水の最大98%のリサイクルが実施されることになった。これを実施するのはTotal E&P Italia SpAで、同社はテンパ・ロッサ油田に6本の油井を所有しており、その油汚濁水処理プロジェクトの設計・調達・建設(EPC)を担当しているMaire Tecnimont SpAに対して、GEがこの最新技術を提供する。
テンパ・ロッサ油田は、同じバジリカータ州内のヴァル・ダグリ油田と並んでイタリアで最も重要な油田のひとつで、同国の需要のおよそ10%を満たす量の石油を供給する能力があるとされている。
イタリアでは、石油採掘施設などには健康、安全、および環境の面できわめて厳しい規制がかけられており、事業者はこの規制を遵守しなければならない。こうしたことから、テンパ・ロッサ油田は、革新的でエネルギー効率のよいソリューションを導入して水を処理し、厳しい排出基準を満たす必要があり、このたびGEの技術が、この石油採掘サイトにおける水リサイクル技術として最良のものとの評価をうけた。
GEの油汚濁水処理技術、欧州には初登場
今回のテンパ・ロッサ油田におけるプロジェクトで、GEの油汚濁水処理技術が欧州で初登場することになる。この技術についてGEは、カナダ、米国、およびオーストラリアにおいて幅ひろい実績をもっている。ここでいう油汚濁水とは、石油を採掘する際に石油といっしょに汲み上げられる水のことで、油井からは大量の油汚濁水が生じるため、これを処理するか、またはサイトから運び去る必要がある。テンパ・ロッサ油田で使われるGEのZLD結晶化装置は、油汚濁水をまず脱ミネラル化する。こうして得られた水は防火用水となる。残ったブラインはさらに濃縮され、塩が結晶化した状態で最終処分される。このZLD技術により、Maire Tecnimont SpAは油田からの排出水に関する国の新たな環境基準の遵守が可能になる。
イタリアは近年、石油と天然ガスの輸入への依存度がますます高まってきていた。テンパ・ロッサなどの新たな油田の開発により、輸入への依存度が減り、イタリアの貿易収支が改善されることが予想される。Total E&P Italiaがテンパ・ロッサ油田にもつ6本の油井は2016年にフル稼働する予定で、その1日あたりの生産能力は原油が約5万バレル、天然ガスが約23万立方メートル、液化石油ガス(LPG)が約240トン、硫黄が約80トンとなっている。
GEが提供するシステムの概要
GEは、脱油、強制循環ブライン濃縮、蒸発、結晶化などのユニットから成るZLD油汚濁水処理システムを2基提供する。このシステムの動作プロセスは複雑で、濃縮と結晶化にはGEの多段効用蒸気駆動ユニットが使われる。蒸発プロセスで発生する蒸気はGEの空冷コンデンサと給気冷却器で所要の温度まで冷却され、凝縮されて脱ミネラル化水となり、防火用水として再利用される。
エネルギー効率にすぐれたこの技術は、1ラインにつき毎時52立方メートルの処理能力をもち、油汚濁水の98%を蒸留液および固形物として回収することができる。システムの納入は2015年第1四半期に、設置作業は2015年第3四半期までに完了する予定である。