欧州委員会からの委託でEUでの水の再利用の促進策を研究するコンサルティング会社Deloitteは2014年3月25日、都市・産業廃水の再利用に関する法的拘束力のあるEU基準を定めることが、この慣行を阻む安全や取引上の懸念に対処するのに役立つとの見解を示した。また、他の政策オプションとして、水不足気味の加盟国に目標設定の検討を義務付けることや、産業向けBAT参照文書(BREF)や共通農業政策(CAP)に水の再利用を将来的に反映させることなども示した。
この日、EU諸国の専門家と関係者を前に同社が行ったプレゼンによると、EUは2025年までに最低でも年間32億2200万立法メートルの水を再利用し得るという。これは普通水の使用量の僅か1.4%相当であるが、現在の再利用量の3倍の水準である。
欧州委員会は2014年4~5月に様々な政策オプションについて意見公募を開始する予定で、12月までに影響評価を終えたい意向である。そしてEUレベルでの立法措置の適切性が確認されれば、2015年末までに法案を提出するつもりである。
欧州委員会は2012年に発表した方針書「欧州水資源の確保に向けた青写真」の中で、水の再利用政策の策定について検討することを公約していた。水不足気味の地域では、再利用のほうが他のオプション(脱塩処理や他地域からの給水など)より環境影響が低い。
処理水や再利用水は産業、農業、そして飲料用にも使われ得る。しかし、規制の不透明性と公衆の安全性への懸念が大きな壁となっている。また、再利用水で育てた食品の取引が阻まれる可能性も懸念されている。こうした背景を受けて一部の加盟国は再利用水に関する独自の基準を採用しているが、これらは厳し過ぎたり、変わりやすかったりするとDeloitte社は指摘した。一方、普通水の利用への課金・規制が不十分でも、再利用水の使用が促されないことになる。同社は、水の価格設定に関する指針を作ることで、こうした問題に対処し得るとした。さらに、水リサイクルの利点に関する公衆向けの啓蒙活動を行うことや、最善慣行に関する情報をEU諸国間で共有することなども提案した。