中国では、人口増加と急速な経済発展に伴い、都市部の水資源需要が年々増え、水不足の問題は深刻さを増している。この問題を解決するため、天津市・濱海新区(ひんかいしんく)は生活排水の工業分野でのリサイクル利用に力を入れている。
2014年3月、天津市瑞徳賽恩水業有限会社が1億8000万元(約30億円)を投じた天津市・濱海新区初の生活排水の収集・処理による再生水事業である「大港再生水プラント」が稼働し、水供給を正式に開始した。同事業は、国内初の高度処理された生活排水を高圧ボイラー補給水として再利用する事業であり、循環節水・環境保護モデルプロジェクトとして国家発展改革委員会の支援を受けている。同プラントは1日当たりの汚水処理量が約3万トンで、それにより1年間で約1000万トンの地下水を節約できるという。
瑞徳賽恩水業の張兆軍総経理は「地域の水資源利用のバランスを取るには、都市生活排水の工業企業用水への再利用が肝心である。今回の大港再生水プラントの稼働は、地域内の水資源の効率的調達に貢献できると信じている」と語った。
張総経理の説明によると、天津市の石油化学工業は、長年にわたって100キロ以上離れたところに位置する河北省・蓟県(けいけん)の地下水と、天津まで引かれた灤河(らんが)の水(引灤入津プロジェクト)に頼ってきた。地域内企業の年間用水量が2000トンに及んでいるため、仮に地下水ですべてカバーするとなると、天津の生態系に大きな影響を及ぼすに違いない。同時に、大港区域の生活排水のほとんどは、簡単な処理を経て海に直接放流され、海水と土壌の汚染源となっていた。今後は、大港再生水プラントの運営によって生活排水が収集され、高度処理により排出基準一級を満たし、天津石油化学工業の高圧ボイラーの補給水として再利用できるという。
また、大港再生水プラントの処理プロセスには排水処理、高度処理水再利用、汚泥処理という3つのプロセスが含まれている。そのうち、1日あたりの高度処理の処理量は3万トンであり、それによって、工業用水量を50%削減し、年間約1000万トンの地下水を節約することになるという。また、最終の排出水の水質は排出基準二級に近いため、汚染物質の排出量も大幅に削減される。同時に、天津市・宝坻区の採水量の大幅削減、過度採水による地盤沈下の緩和にもつながると張総経理は説明した。