中国の十二次五カ年計画によると、“十二五”期間中(2011年~2015年)において中国では、下水処理分野、工業排水処理、流域汚染対策に対する投資需要はそれぞれ4300億元(約7兆950億円)、4500億元(約7兆4250億円)、2900億元(約4兆7850億円)であり、合計1.2兆元(約19.8兆円)を上回る見込みである。「齊魯証券・環境保全工程及びサービス業界分析」の張 愛鈴 氏の予測では、2014年~2015年に当たって、中国の環境汚染対策分野における投資規模はいずれも1兆円以上に達し、2015年の投資額はGDPの2%を占めるものと期待されている。また、2012年に公布された中国「“十二五”全国城鎮汚水処理及び再生利用施設建設計画」では、2015年までに汚水処理容量を2010年比で4569万m3/日を新たに増強し、年平均成長率が6.44%に達するものとみられている。
これに伴い、先ほどの張 氏の分析では、2015年までに中国の膜市場規模は最大で約500億元(約8250億円)に達するという。中国では、膜技術の水処理応用は主に給水、排水処理、および再生水分野に集中するものと見込まれている。“十二五”期間における膜関連製品の使用状況を考慮すると、楽観的な見通しでは2015年までに中国膜市場の規模は265億元~497億元(約4372億円~約8200億円)に達する。そのうち最大の需要先は、給水分野における新規施設および改修更新プロジェクトで、給水分野だけで膜関連製品の需要は約105億元~211億元(約1732億円~約3481億円)に及ぶという。それに続いて、汚水処理の新規施設および改修更新プロジェクトでの需要は約108億元~189億元(約1782億円~約3118億円)に、再生水利用での新規市場規模は40~67億元(約660億円~約1105億円)に達すると見込まれている。
こういった膜技術の普及の背景としては以下の4点が挙げられる。
- 中国では、水資源不足と都市部水質汚染の問題があり、その防止対策が強く必要とされている。2012年、中国の一人当たりの淡水保有量は2047m3で、世界平均値の25%に過ぎない。全国657の都市のうち300余りの都市は、国連人間居住計画(UNHSP)の評価基準の「深刻な水不足」または「水不足」に属する。また、32の人口100万人以上の特大都市のうち30の都市が水不足の問題に悩んでいる。北京、天津、青島、大連などで水不足問題が最も深刻である。一方農村部でも、約3億人が不衛生な飲用水を使用している。
- 中国城鎮汚水再生利用率は10%未満で、関連投資額は依然低く、将来的な成長の余地が大きい分野である。また中水再利用率も10%以下で、“十二五”期間中に再生水利用を2676万m³/日だけ増加させ、再利用率を15%に引き上げる計画である。水不足の都市は再生水利用がさらに求められている。
- 水質標準の強化は水処理技術の発展を促進する。飲用水の水質標準は経済発展とともに進歩している。2006年に国家標準「城鎮汚水処理場汚染物質排出標準」(GB18918-2002)の修正案が承認され、これにより71項目が新規追加され、合計106項目となり、有機物質や微生物などについてより厳しく規定された。しかしながら、国際的な基準値と比べて、依然として国内基準値は緩いのが現状である。
- 膜技術の進歩とコストダウンにより、膜処理の応用の可能性が高くなっている。膜技術設計の進歩、維持・管理方式の最適化、および、膜寿命の延長などによって、ライフサイクル・コストは400ドル/m2(1992年)から50ドル/m2(2005年)に減少した。とくに先進国ではMBR技術が広く利用されている。政策は膜産業発展の駆動力である。中国では5年間連続で膜技術を重点支援プロジェクトと位置付けている。2010年の「国務院の戦略的新興産業の育成および発展の加速についての決定」においては、高性能膜材料を大きく発展させることが強調された。2012年、科学技術部による「高性能膜材料科学技術『第12次5カ年』特別産業計画」では、“十二五”期間において、5~8 種類の主要な膜材料の国産化を実現するとともに、10社以上の上場企業を育成するという目標を打ち出した。