シンガポールとサウジアラビアの研究者らが、新考案の正浸透(FO)プロセスで廃水から重金属イオンを除去できることをはじめて実証した*1。そこで報告されているFOプロセスは、廃水から重金属イオンを除去する能力にすぐれ、しかも、重金属イオンの濃度が高い場合でも高い阻止率を維持できることがわかった。
このFOプロセスには、マクロ孔のないポリミド支持体上における界面重合からつくられる薄膜複合(TFC)FO膜、およびドロー溶質として新考案のバルキーな水素酸合成物、Na4[Co(C6H4O7)2]・2H2O(省略名:Na—Co—CA)が使われ、溶質の逆流を最小に抑えている。
満足すべき流量と阻止率で6種類の重金属イオンの除去に成功
このプロセスを使って、論文の著者らは6種類の重金属化合物――Na2Cr2O7、Na2HAsO4、Pb(NO3)2、CdCl2、CuSO4、およびHg(NO3)2――の溶液から重金属イオンが除去できることの実証に成功した。それによると、1 M(モーラー=モル濃度)のNa—Co—CAをドロー溶液として使って、室温状態の2000 ppm(1 ppm = 1 mg/L)の重金属溶液を処理したところ、重金属の阻止率99.5%でおよそ11 L/m2/hのFO流量が得られた。
これは、ほとんどのナノ濾過(NF)プロセスをしのぐ性能である。また、重金属イオンの阻止率は、ドロー溶液の濃度をを1.5 Mにまで増やした場合でも、あるいは供給溶液の濃度を5000 ppmにまで増やした場合でも、99.5%という高い値のまま維持された。
さらに、このFOプロセスを60℃で動作させると、流量は16.5 L/m2/hに、阻止率は99.7%にまで上げることができた。
こうして、さまざまな条件のもとで、みごとな重金属阻止率と満足すべき流量が実現できたことにより、重金属を含む廃水の処理にこの新開発のFOシステムが効果を発揮する可能性が大きくひらけてきた。
*1 Yue Cuia, Qingchun Ge, Xiang-Yang Liu and Tai-Shung Chung, 2014: Novel forward osmosis process to effectively remove heavy metal ions, Journal of Membrane Science,
doi: 10.1016/j.memsci.2014.05.034
http://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0376738814004104