カリフォルニア州沿岸部の観光の町、サンルイスオビスポ郡カンブリアは、渇水の非常事態に対処するための州の早期承認スキームを活用して、淡水化プラント建設プロジェクトを、わずか6ヵ月の準備期間で稼働にこぎつけた。本格操業は2015年1月中に開始される予定である。
このプロジェクトは、ジェリー・ブラウン知事が2014年に非常事態宣言によって導入した新たなルールのもとで実施されるインフラ・プロジェクトのなかでも最大のもののひとつで、淡水、河口域の水、および高度処理した下水を水源とし、それらを混合して町の水需要のおよそ3分の1をまかなう。下水をリサイクルした水を飲用水に利用する試みはカリフォルニア州内でもいくつかの町ではじまったばかりで、カンブリアもそのひとつである。
異例の早期稼働――いっぽうで異論も
カンブリアの水道局は、淡水化プラントの建設をめざして1990年代から努力をかさねてきた。また、町民も、ブラウン知事が緊急節水計画ですべての州民に求めた節水率の倍にあたる40%の節水率を達成した。カリフォルニア州では、淡水化プロジェクトをはじめるには環境審査、公聴会、および関連する訴訟などに通常は数年かかる。
サンルイスオビスポ郡とカンブリアの水道当局は2014年5月にこのプロジェクトを公表し、そのために1300万ドル(約15億円)の借入をおこなった。この費用の一部は、水道利用者が料金値上げによって負担することになる。
州環境保護局中央海岸地域水質管理委員会の事務局幹部、Harvey Packardは、「これはまさに、知事が非常事態宣言で意図していたことだ」と述べている。ブラウン知事の非常事態宣言は州の行政機関に対して、水を必要としているコミュニティを支援するよう命じている。昨今の旱魃では、カンブリアの景観を特徴づける樹木として有名なモントレーマツの4分の1が消滅した。カリフォルニア州の複数の行政機関が、プロジェクトに必要ないくつかの許可を工事の進行と同時並行的に取得できるようとりはからった。また、プラントが稼働をはじめてからくだされる許可もある。
いっぽう、カンブリアのある市民団体が2014年10月、複数の行政機関による環境保護のための手続きが不正に省略されているとして、カンブリア水道局を相手取って訴訟を起こした。また、同年7月には、カリフォルニア州の機関である沿岸委員会の事務局が、このプラントは政策上の重大な懸念をもたらすものだとしてカンブリア水道局に警告を発している。