世銀の国際投資調停機関(CIADI)は2015年4月9日アルゼンチン政府に対し、2006年の上下水道サービス契約破棄の損害賠償として、約4億米ドルをSuez社に支払う事を命じた。
Suez社の子会社であるアルゼンチンのAguas Argentinas社は、公共サービスが民営化された1993年からブエノスアイレス市の上下水道サービスを行っていたが、2006年に、投資の引き上げ及び契約不履行を理由に、アルゼンチン政府より契約を解消された。当時のアルゼンチン政府の言い分では、同社の飲料水は高濃度の硝酸塩を含有しており、水圧に関する規約や、飲料水供給網の拡張及びサービス改善も遵守していなかった点が、契約解消の理由とされている。一方民間投資擁護団体によれば、アルゼンチン通貨切り下げ時に水道料金がペソ建てで凍結されたことにより、収入の実価が明らかに減り、当初の目標の達成が困難となった点、また、民営化を急いだことで、規制機関による民営化運営の管理が経験不足でうまくいかなかった点や、契約書に盛り込まれる情報不足の責任を、将来の見直しを条件にスエズ側に押し付けられた点が指摘されている。
解消は交渉によるものではなく、一方的なものであった為、同社はアルゼンチン政府に対して契約解消は違法であると訴え、2006年の契約解消時には17億米ドルの賠償金を要請していたが、CIADIは、非経済的損害や、損害賠償金は認めず、返却すべきであると判断される投資金額のみが支払い対象となっている。
スエズ社のプレスリリースでは、Aguas Argentinaは、それまで飲料水や下水道へのアクセスがなかった2百万人の住民を含む、合計8百万人以上の住民へサービスを供給していた点が強調されている。尚これを受けてアルゼンチンの経済相は、CIADIに対して控訴すると4月10日に発表している。
なおブエノスアイレスでは、スエズとの契約を解消した2006年からは、90%を政府が所有するAguas y Saneamiento Argentinos S.A. (AYSA)が、上下水道サービスを供給している。