ドイツ連邦カルテル庁(独占禁止当局)は、2015年6月30日に公表した最新の「2013/2014年活動報告書*1」のなかで、ドイツで進む廃棄物処理事業や水道事業の再公営化のトレンドに否定的な見解を示した。
廃棄物処理事業で、公営事業による民業圧迫の傾向が進んでいる
ドイツの多くの民間廃棄物収集業者が近年、許認可当局から事業許可の発給を拒否され、事業を限定するか、廃業に追い込まれている。循環経済法第17条と第18条では、商業的な廃棄物収集を行う場合の届出義務を課している。公益が優先される場合には、当局は商業的収集を不許可にすることができる。いっぽう、届出と不許可を所管する当局と公営廃棄物処理事業者が同一の行政部に属していることへの苦情が市場から出ている。連邦カルテル庁の経験から、このケースで利益相反行為がなされる可能性を排除できない。当局は、同一の行政部に属する公営事業者に、古紙や空き缶といった価値ある二次原料を収集させ、収入を得させんがために、商業的収集を不許可にしたい誘惑にかられるおそれもないとはいえない。このトレンドは問題である。長い歳月をかけて成長してきた競争の仕組みを圧迫するものだからである。
民営水道事業者が、カルテル庁の監督から逃れるため再公営化に踏み切る傾向がある
ドイツの民営水道会社は、その所有者が100%市町村の場合でさえ、水道料金の設定にあたって、連邦カルテル庁の監督に服している。いっぽう、市町村営の水道局は、州の水道料金法に従って料金を設定していて、連邦カルテル庁の監督は及ばない。その料金体系は最終的に、水道局や市町村が自ら決定している。ドイツの水道料金は地域によって数倍の格差がある。ところが最近、水道料金が不当に高すぎるとして、連邦カルテル庁の監査を受け、水道料金を強制的に引き下げられた多くの民営水道事業者が、いわゆる「再公営化」という迂回路を使って、州の水道料金法の適用下に入り、連邦カルテル庁の監督から逃れようとするトレンドが進んでいる。
ドイツの大手民間リサイクル事業者の業界団体、ドイツ連邦廃棄物処理・水・原料事業協会(BDE)のPeter Kurth会長は、「連邦カルテル庁が再公営化のトレンドを認識し、かつ市町村の経済活動が民間企業や消費者にとって重荷になっている、と認定したことを非常に喜ばしく思う。BDEはかねがね、政府が市場参加者と権力の担い手という二重の役割を担うと、市場の歪みが生じるおそれがあると、問題点を指摘してきた。市町村の経済活動に関する法的規制を緩める取り組みがさらに進めば、民営企業への差別が大きくなるとの連邦カルテル庁の懸念を、BDEも共有している」と述べた。