中国環境保護部は、2015年10月、「水汚染防止行動計画*1」(以下は「水十条」に略)の実施状況を公表した。環境保護部関係者によると「「水十条」の実施を徹底するに際して肝となる取り組みは、(1)水汚染防止の協商メカニズム、(2)関連政策、(3)目標責任書(※注)および(4)考課弁法(目標達成を評定する際の方法や標準など)の4点であり、これらの策定作業が現在進行中であるという。
今回の公表情報によると、国務院・各地関連部門は、積極的に「水十条」を実施し、段階的な成果を挙げている。環境保護部は定期的に「水汚染防止工作簡報」を作成しており、国務院及び各地の関連部門に「水十条」の実施状況や得られた経験などを情報提供し、協力して「水十条」を推進することを徹底している。2015年9月下旬までにすでに5期分の「水汚染防止工作簡報」が作成・公表されているという。さらに「水十条」の主体は地方政府であり、地方政府は、管轄地域における水質汚染対策を進めている。各地方政府には2015年末までにそれぞれの地域における水汚染防止工作方案を作成・公表するとともに、各年の流域別、地域別、業界別の重点任務および年度目標を明確にし、国務院に登録することが求められている。
環境保護部および財政部は「水十条」の任務を支持・引導し、また財政資金の使用効率を向上させるために、2015年7月、共同で「水汚染防止専用資金管理弁法」を公布した。同専用資金は、重点流域水汚染防止、水質が比較的良好な河川・湖沼の生態環境の保全、飲用水水源地の環境保全、地下水環境保全および環境修復、都市部の悪臭発生汚水対策、複数の省を跨ぐ河川の環境保全対策、国土河川の総合対策モデル事業などの取り組みに活用されており、2015年に使用された同専用資金は130億人民元(約2600億円)に達している。なお、その内訳は、湖生態環境保全分野に62億7000万人民元(約1254億円)、遼河水環境総合対策分野に1億8000万人民元(36億円)、国土河川総合対策モデル事業分野に5億5000万人民元(約110億円)、「水十条」のその他の任務の実施に50億人民元(約1000億円)、突発汚染事件対応に10億人民元(約200億円)となっている(下図)。
図 水汚染防止専用資金の使用内訳(単位:億元)
また、環境保護部および財政部は2015年4月に水汚染分野におけるPPP方式の促進の奨励政策を公表している。さらに、同年6月、財政部は「政府と民間資本合作プロジェクトモデル事業の更なる促進に関する通達」を公布した。同通達は各地のPPP関連モデル事業の推進を指導・促進し、早い段階で普及に相応しい範例を複数作り出せるよう要求した。これは、水汚染防止分野の民間資本導入を段階的に推し進め、最終的に全面開放する方針を示すものである。
そのほか、環境保護部および建設部は2015年9月に共同で「都市部臭黒水体対策取組み指南」を公表しており、また地方レベルでは、北京市、天津市、山東、上海、河北、浙江、江蘇などの地域が積極的な取り組みを行っている。
前述の「水汚染防止専用資金管理弁法」の原文は下記のURLにて閲覧できる(中国語:簡体字)。
http://www.gov.cn/xinwen/2015-09/11/content_2929582.htm
また、「政府と民間資本合作プロジェクトモデル事業の更なる促進に関する通達」の原文は下記のURLにて閲覧できる。
http://www.zhb.gov.cn/gkml/hbb/qt/201505/t20150506_300895.htm)
※ 注:国務院は各省、自治区、直轄市の政府と「水汚染防止目標責任書」に調印して、地方政府に責任を負わせる。目標達成の評定結果は関連補助金配分の根拠となる。
*1 EWBJ54号に関連記事あり「中国国務院、水汚染防止行動計画(水十条)を発表――水質汚染改善の中長期的目標やそのための措置について盛り込む」