GCC、世界的な海水淡水化技術の先駆者と位置づけ

海水淡水化業界の非営利団体であるInternational Desalination Association(IDA)は2017年1月16日、アラブ首長国連邦(UAE)アブダビで開催された国際水サミット2017(International Water Summit 2017)にて市場報告書「IWS 2017 Market Report」を公開し、アラブ首長国連邦を始めとする湾岸アラブ諸国協力理事会(GCC:Gulf Cooperation Council)は世界的な海水淡水化技術の先駆者であり、世界全体の水セキュリティを向上する上で同技術の利用価値を実証したと発表した。脱塩処理を通じて生成される淡水は世界全体で1日当たり約8700万立方メートルに及び、全体の44%が中東・北アフリカ地域(Middle East and North Africa)で占められている。GCCに属するサウジアラビア、アラブ首長国連邦、クエート、カタールの4か国は、海水淡水化で生成された淡水の消費量が世界上位10か国にランキングされている。

同報告書ではまた、アラブ首長国連邦では、海水を淡水化する際に全体の約88%で蒸発法が利用されているとしている。同国では伝統的に、発電所からの排熱を利用して熱処理を実施している。アブダビに拠点を構える国営企業Mubadala Companyの子会社であるMasdarは現在、太陽エネルギーと海水淡水化とを統合した先駆的な取り組みを実施しており、海水を濾過する高性能膜を活用した逆浸透(RO)法及び正浸透(FO)法などの先端技術を検証している。同社は2015年以降、パイロットプログラムとして、複数の異なる海水淡水化技術を実証する小規模な海水淡水化施設を4か所運用している。3か所の施設には逆浸透法が、残りの1箇所には正浸透法が導入されている。Masdarは、1年以上に亘り収集したデータを現在検証しており、この結果に基づき、太陽エネルギーと最も合致した効率性の高い技術を今後特定化し、政策策定者や業界関係者へ提唱する。今回開催されている国際水サミットでは、再生可能エネルギーを活用したクリーンエネルギー海水淡水化が同会議の主要議題となっている。

アブダビで開催されている国際水サミットは、アブダビ水電力庁(Abu Dhabi Water and Electricity Authority)との戦略的パートナーシップを通じて、1月19日まで開催される。同サミットは、アブダビ持続可能性ウィーク(Abu Dhabi Sustainability Week)の一環として、Masdarが主催している。国際水サミットは今年で5回目を迎え、中東地域での水セキュリティに関する最新展示や会議が含まれている。今年のサミットでは、中東・北アフリカ地域に位置する水道供給事業者にて意思決定権を有する経営幹部が招聘され、インフラ改善や廃水処理・再利用などを含めた、淡水生成や水保全におけるイノベーションの基盤となる市場の構築を行う。

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