ラテンアメリカ開発銀行CAFは2017年2月6日、ラテンアメリカの水の需給バランスと水確保に関するレポートの暫定報告を発表した。
ラテンアメリカでは、生活水準の向上や都市化、農産品輸出の為の農業開発や観光開発に伴う生産活動の増加により、水の需要が年々増加しており、また気候変動の影響で、水の需給バランスが崩れている国が多くなっている。この為水の確保という概念は徐々に重要なテーマとなりつつあり、2016年の世界水フォーラムでも、水の質と供給の確保が、中期的に人類の最も重要な課題となると位置づけられている。
CAFの調査は、ラテンアメリカの都市は、水の質と供給を確保できるだけのインフラや関連機関の能力が十分かどうかに焦点を当てて行われ、ラテンアメリカの26の都市で、水インフラが整っているか、水源で水の確保が出来ているか及び、水供給網が確保出来ているかが分析された。尚調査対象の26の都市の水管理及び供給は、8都市では民間企業により、18都市では政府機関により、行われている。
調査結果によると、26都市のうち、都市の住民の水の需要をカバーするのに必要なインフラが現在整っているのは、46%に過ぎない。しかし問題は、インフラ不足ではなく、非効率な水の使用である点が指摘されており、一人当たり年間約80m3と見積もられている効率的な使用が達成できるのであれば、需要をカバー出来る都市は90%に達する。
また調査では、需要に応えられるだけの水量があるかどうかを見極める為の、各水域のシミュレーションも実施された。今後の気候の変化を考慮し、水の循環モデルを使った分析では、2021年から2050年の見通しとして、推定需要量をカバーするに十分な水資源があるという結果が出ている。従って水の量自体は、ボトルネックにはなっておらず、問題は水供給網の管理が不安定であることだと指摘されている。
分析した26都市のうち、例えば、コロンビアのバランキージャ市やエクアドルのグアヤキル市では、現在給水全体の60%が喪失しているという結果が出ている。全体的に殆どの都市で、供給水の水の管理が非効率であり、水の喪失量が多い。
また水供給の管理不足のコストは、消費者に転嫁されており、調査した都市の3分の1以上の都市では、水道料金が家庭あたり100米ドル以上の高水準で、46%は50から100米ドル、50米ドル以下は19%で、家庭の収入に占める水道料は平均8%と、米国の1~2%に比べて高いものとなっている。