ラテンアメリカ開発銀行CAFは、ラテンアメリカの農村地区の上下水事情をまとめた500ページのレポートを発表した。
ラテンアメリカは世界でも最も水資源に恵まれた地域であるが、3400万人の住民は、水へのアクセスがない状態となっている。特に農村の状況は深刻で、インディオ系や黒人系が多い農村に住む2100万人は、適切な質の飲料水へのアクセスがなく、4600万人には下水道がとどいていない。
都市と農村の格差をなくし、全てのラテンアメリカの住民に上下水サービスを提供する為には、まず農村の定義をはっきりさせる必要がある。人口による定義によっては、農村とみなされる地域が増える可能性もあるからである。CAFのレポートでは、従来の農村に対する概念とは違う、社会経済状況や人口、上下水サービスへのアクセス状況を考慮したアプローチで、農村を分析したものとなっている。
レポートでは、人口密度が1km2あたり15人以下で、一定レベルのサービスが享受できる都市の中心部までの移動時間が1時間半以上である地域を、農村とみなしているが、ラテンアメリカでは、ここ数十年で、社会経済面や政治、技術の変化でグローバル化が進み、農村生活も変わってきている為、地域性やインフラの整備プロジェクトの有無なども考慮した定義づけが必要であると指摘されている。
この新しい定義でみると、ラテンアメリカの30%以上が農村に住んでいることになり、上下水サービスへの投資戦略や計画は、農村の特性を考慮した効率の良い施策が必要となっている。CAFが上下水インフラへの一番の融資元となっているボリビアやエクアドルでは、農村人口の割合がラテンアメリカの他の地域よりも高いが、近年大きな進歩をとげている。ボリビアでは、2014年の水セクターへの投資額が、ラテンアメリカの他の国の倍近い、GDPの0.55%に達したが、それでもボリビアは、農村部の下水普及率はまだ低く、やるべきことはまだ多い。一方エクアドルではCAFは、上下水インフラ整備と廃棄物管理をセットにした、エクアドルの人口の3分の1にあたる520万人に恩恵を与える655のプロジェクトを実施している。
CAFは、農村の住民向けの上下水サービスを改善する為には、投資額を増やすだけでなく、持続可能な管理が出来るインフラやサービスの供給に努めないと、短期間で修復への再投資が必要となり、政府の支出が増えることになると、指摘している。
CAFの報告書は、以下のサイトからダウンロード可能(西語表記)。
http://scioteca.caf.com/bitstream/handle/123456789/918/Agua%20y%20saneamiento%20en%20la%20nueva%20ruralidad.pdf?sequence=1&isAllowed=y