欧州委員会は2017年6月26日、海洋へのマイクロプラスチック排出の削減に向けた政策オプションについて意見公募を始めた。排出にまつわる懸念や取り得る削減策について広く情報提供して反応を得ることと、他の排出源や削減策に係わる追加情報を収集することが目的で、10月16日まで市民や利害関係者からネット上で意見を受け付ける(詳細は下記URL)。
https://ec.europa.eu/info/consultations/public-consultation-investigating-options-reducing-releases-environment-microplastics_en
マイクロプラスチックは大きさが5ミリ未満の微細プラスチック片で、溶けてなくなることはなく、有害な海洋汚染の主因とEUの科学者は見なしている。欧州委員会は今回、その排出削減に向けて複数の施策方針を示し、意見を求めている。
タイヤの摩耗から偶発的に排出されるマイクロプラスチックについては、最も耐久性の劣るモデルの段階的廃止を新法でメーカーに義務付ける案や、財政的優遇策、EUタイヤラベルでの耐久性ランクの表示、環境に優しい運転の摩耗減少効果の広報、産業の自主的取り組みで耐久性を高める案などを示している。また、飛散低減策として、路面への多孔性アスファルトの使用拡大、路面清掃や路肩緩衝緑地帯の増強、マイクロプラスチック捕獲装置を開発して自治体の廃水処理場に設置する案などを示している。
合成繊維の洗濯から偶発的に排出されるマイクロプラスチックについては、メーカーに出荷前の洗濯を義務付ける案や、排出量の多寡の表示義務付け、財政的優遇策、排出を減らす洗い方の広報(液体洗剤で低温で上限量で洗うなど)、メーカーが自主的に採用可能なEUエコラベル基準の策定、排出の段階的削減を法でメーカーに義務付ける案などを示している。また、捕獲策として、新しい洗濯機に捕獲フィルターの搭載を義務付ける案や、捕獲機能のある洗濯ネットの提供をメーカーに奨励する案などを示している。
世界の海洋へ直接、排出されるマイクロプラスチックのうち、タイヤの摩耗と合成繊維の洗濯に起因するものは、それぞれ全体の約3分の1ずつを占めている。このほか、化粧品や洗剤、建物用ペンキへのマイクロプラスチックの意図的な添加については、法律による全面禁止から、課税、ラベル表示の義務付け、産業による自主的対策まで幅広いオプションを示している。なお自主参加型のEUエコラベル制度の下では既にマイクロプラスチックを意図的に添加した化粧品と洗剤は認められなくなっている。また、バッグなどプラスチック製品の原料として作られる“ペレット”と呼ばれる粒の排出を最小限に抑えるためのEU法も提案している。
欧州委員会は2015年12月2日、循環型経済に向けたEU行動計画を示す方針書を発表し、この中でプラスチック問題に対応する戦略を2017年末までに出す方針を示している。マイクロプラスチック規制は、その戦略の3本柱の一つとなる。