欧州委員会が水枠組み指令の合目的性の見直しに着手、ロードマップで進め方示す

欧州委員会は現行EU法の合目的性・奏効性の見直し事業(REFIT)の一環として、水枠組み指令(2000/60/EC)と洪水指令(2007/60/EC)が今なお目的に適っているかの評価に着手した。評価の大筋を示すロードマップを2017年10月20日に公表し(下記URLからダウンロード)、11月17日までネット上で広く意見(フィードバック)を受け付けるとした。評価は、これら指令とその実施について、改善・簡素化を行い得る部分を特定する可能性もあり、欧州委員会が今後さらなる措置を講じる根拠になり得るという。
http://ec.europa.eu/info/law/better-regulation/initiatives/ares-2017-5128184_en

ロードマップによると、評価の概要は次の通り。

対象:水枠組み指令(WFD)とWDFに基づき制定された地下水指令(2006/118/EC)および水政策分野の環境質基準指令(2008/105/EC)、そして洪水指令(2007/60/EC)。

評価項目:現時点での存在意義、有効性、効率性、一貫性、EUレベルで対応する付加価値。規制の簡素化・負荷軽減の可能性評価や、実際の数量的な費用効果評価も行う。

参考情報:指令導入から現在までの全加盟国での状況を次の情報などで網羅する。

  • 各国が6年ごとに作成する河川流域管理計画(RBMP)と、それらに基づき欧州委員会が作成中の実施報告書(2018年前半にまとまる予定)、欧州環境庁(EEA)が作成する水の現状報告(2018年に出る予定)。
  • 各国の洪水管理予備評価、洪水危険リスク地図、洪水リスク管理計画(FRMP)。
  • 農業硝酸塩からの水系保護に関する指令(91/676/EEC)の実施報告書。
  • 海洋戦略枠組み指令(2008/56/EC)に基づき各国が2018年にまとめる報告書。
  • 都市廃水処理指令(91/271/EC)のREFIT評価(2017年10月12日に開始)の結果。
  • 外部委託研究、特に水政策と他の政策との関係の総合評価(2017年半ば開始)や情報の欠如を特定・補足し、基礎分析を行い評価を支援するもの(2017年末開始)など。

協議:各国当局、水関連産業、環境NGOを含む諸団体、市民などと2017~2018年に次のような様々な協議の機会を設ける予定(欧州委員会またはその委託事業者が主催)。

  • WFDと洪水指令に関するネット上での意見公募(2018年前半)。
  • 欧州水会議(各国当局や利害関係者を招き2018年第3四半期に開催)。

これら水関連の包括的なEU法は、淡水資源の保護・改善を目的とし、2015年までに域内で良好な状態を達成することを目指している。環境団体WWFのMlinaric上級政策スタッフ(senior policy officer)は、今回のREFIT評価でWFDが目的に適っているとの結論が確実に出るとNGOは見ているとした。そして、良好な状態がEUの河川や湿地や湖の半分でしか達成されていないのは、法の実施に不備があり、各国の野心が欠けているからであるとし、法を弱めないように求めた。環境団体EEBも同じく、実施の強化で目標を達成し得ると考えている。加えてEEBのMazza上級政策スタッフは“評価は問題点を特定し、法に新たな活力を吹き込むはず”とした。

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