ベトナム・ハノイ市には89の産業クラスターがあるとされているが、そのうちの21か所にしか集中廃水処理システムが整備されていないのが現状である。最近のハノイ市人民評議会の検査によると、同市に位置している産業クラスターにおける廃水収集・処理活動に対する法的規定の実施は未だ不十分であり、早めに克服するべきであるという。
未だに環境中に直接排出する施設も見られる
2016年3月8日付けハノイ市人民評議会の決議第05/NQ-HĐNDでは「2020年までに環境基準またはそれに相当する国家規格を満たす集中廃水処理システムを有する工業団地、輸出加工区、産業クラスターを100%にする」という目標が掲げられた。この決議を実施するために、これまでハノイ市人民委員会は工業団地における廃水収集、処理についての法令規定を積極的に展開し、計画通りに21か所の集中廃水処理システムに投資をおこない、建設を完了した。しかし調査の結果、現在まで安定的に稼動しているシステムはそれら21か所のうち12か所しかなく、残り7か所は機械の故障または老朽化による非効率な運転、そのほか2か所は稼動していないという状態であるという。
また、人民評議会の都市部門専任の代表であるHoang Thuy Hang氏によると、都市部では68の小規模産業クラスターがあるという(実際には伝統工芸村である)。これらは住宅地に散在またはその近くに置かれることが多く、集中廃水処理システムを有していない。そのため、廃水が未処理のまま環境中に直接排出され、環境汚染を引き起こす可能性が高いのが現状である。
ハノイ市ドンアン(Dong Anh)郡には3つの産業クラスターがあるが、広さ77 haに及ぶNguyen Khe産業クラスターにだけは集中廃水処理システムが設置されている。一方で、18 ha以上の規模を有するDong Anh産業クラスターには集中廃水処理システムの建設のための投資が行われていない。Lien Ha産業クラスターでは集中廃水処理システムを建設中であるために、いまはまだ環境中へ直接排出している。Dan Phuong郡には7つの産業クラスターがあるが、Phung町の産業クラスターだけは集中廃水処理システムの投資が行われた。
Dan Phuong郡人民委員会の委員長Nguyen Huu Hoang氏は「ほとんどの産業クラスターでは廃水量の実績に基づいて廃水処理システムを建設しなかった。例えば、Lien Trung、Lien Ha産業クラスターでは木製製品の製造が中心であり廃水量が多くないため、集中廃水処理システムへの投資は行われなかった」と指摘する。
対策の展開
ハノイ市人民評議会の都市部門のNguyen Nguyen Quan部長の発表によると、上記のような状況に繋がった客観的原因としては、環境保護法が制定される以前に、伝統工芸村などから形成される産業クラスターが多く、土地の開発などで様々な困難があったために、故意に違反しているからである。いっぽう主観的原因としては、一部の地方の党委員会および自治体が、この問題に対してあまり関心を持っていなかったために、管理、指導活動が徹底されてこなかったというものである。このほかにも、各省レベルの関係局および区・郡の人民委員会が廃水処理システムへの投資プロジェクトの審査・承認の際に、その調査、廃水流量の計算を適切に実施していなかったという点も指摘されている。
現在の環境に直接排出している状況を克服するため、ハノイ市人民評議会の都市部門のメンバーは、「2030年までの段階を含め、2020年までにハノイ市における産業クラスター開発計画」についてハノイ市商工局は可及的速やかに完成すべきである、と説明している。その計画をベースとして、各地方が集中廃水処理システムを建設するとのことである。建設局は安定的に稼動している廃水処理システムの現状を確認、判断すると共に、承認されたプロジェクトの進捗度を推進し、早めに稼動できるようにする。
検査の強化
ハノイ市人民評議会の都市部門のVu Ngoc Anh副部長の発表では、廃水の収集・処理活動における査察および違反行為への処分を厳しくし、強化することの必要性が述べられた。なぜなら、2014年から現在に至るまで、権限機関は89か所の産業クラスターのうち、14か所にしか査察を展開できなかったからである。そのほか、企業が廃水量の実績を低く申告することを防ぐために、廃水の自動モニタリング・システムを設置することを求めていくことも必要となる。集中廃水処理システムが未だに無い小規模産業クラスターについては区・郡・村が製造施設の管理者に対し、廃水を環境に排出する前に収集し、処理システムの設置を要求するように提案された。