フランスのエドゥアール・フィリップ首相は2018年8月29日、同年4月に開始された上下水道網の改修に関する討論会“水大会(Assises de l’eau)”の第1フェーズの成果を発表した。水大会は「許容可能なコストで上下水道サービスの質を確保する」ことを目的とし、地方議員、国会議員、消費者団体、水道事業者等が参加している。ちなみに、今般の首相発表はニコラ・ユロ国務大臣・環境連帯移行大臣が辞意を表明した翌日であったが、この日の発表は以前から予定されていたことであり、ユロ氏の辞任による変更はなかった。
水大会は第1フェーズと第2フェーズで構成され、このほど終了した第1フェーズでは飲料水と下水処理施設に係わる“小さな水循環”への投資拡大について検討された。その主眼は漏水対策にある。フランスでは現在、飲料水の約20%(全国平均)が漏水により失われている。フィリップ首相は「我が国の上下水道網は主に“栄光の三十年間(第二次世界大戦が終結した1945年から1975年までのフランスの高度経済成長期)”に整備されたものであるが、それ以後、保守や改修のために十分な投資が行われてきたと確言することはできない」と述べている。政府は上下水道網の改修サイクルの期間を2分の1に(つまり頻度を2倍に)することを目標としている。
水道事業者は数年前から、上下水道網の改修率(現状では0.6%/年)を改善する必要があることを訴えており、このたびの政府のアプローチを歓迎している。これに対して地方自治体は、むしろ極端な地域格差の是正を優先すべきであると主張している。このような状況を踏まえ、フィリップ首相は8月29日の発表において17の施策を打ち出した。これらの施策は、漏水対策のための投資を促進し、上下水道網の管理を改善し、良質な飲用水の供給を保証するために、公的アクター(各地の水管理局、地方自治体、預金供託公庫)と民間アクター(水事業者や銀行)の力を結集させることを目的としている。17の施策には、2019年から2024年にかけて漏水対策のための資金援助を50%増額し、資力に恵まれない地方自治体に20億ユーロ(約2622億円)を融資すること等が含まれている。政府は、2019年から2024年にかけて総額360億~410億ユーロ(4兆7199億~5兆3755億円)の投資を想定している。
水大会の第2フェーズは2018年9月17日から2019年初めにかけて実施され、水資源の質的・量的側面に係わる“大きな水循環”、特に水資源に影響を及ぼす気候変動への対策について議論される。なお、水会議の開催はマクロン大統領により2017年11月24日に予告されていた。