インド政府、水の回収・再利用に向けてシンガポールの関係機関と覚書を締結

インド飲料水・公衆衛生省(Ministry of Drinking and Sanitation)と、政府系シンクタンクNiti Aayogは2018年11月26日、国内における水の回収・再利用に向けて、Singapore Corporation Enterprise(SCE)、及びTemasek Foundationとパートナーシップを締結した。インドでは急速な都市化に伴い水資源の確保が急務の課題である。そのため、将来の持続可能な水資源の確保に向けて、一度使用した水(排水)の回収・再利用分野で先進国であるシンガポールの実績や専門性をインドへ適用することを狙いとしている。

インドでは、2001年には2億9000万人であった都市居住人口は2011年に3億7700万人にまで膨れ上がった。都市部の水需要は急激に拡大しており、特に大都市地域では深刻な水不足に陥るなど、水事情が悪化している。さらに気候の変化や降水量の一時的且つ地域的な変動による影響も、安定的な水利用を阻害する要因となっている。同国では地下水脈の改善に向けて雨水捕集に取り組んできたもののその成果は不十分であるため、別の持続可能な水資源の確保を通じて水資源を多様化する必要性に迫られている。インド政府は、排水の回収、再利用を実施しているシンガポールの専門性を生かして問題解決することに期待を寄せている。

SCEのCEOであるKong WyMun氏、及びTemasek Foundationの最高責任者(Chief Executive)を務めるBenedict Cheong氏は、インド飲料水・公衆衛生省Parameswaran Iyer大臣とNiti AayogのCEOであるAmitabh Kant氏と共に、インド首都ニューデリにて覚書(MOU:Memorandum of Understanding)に署名した。同覚書の署名式には、シンガポールのインド大使を務めるLim Thuan氏も出席した。Kant氏は署名式終了後、「排水の回収・再利用は、潜在性のある持続可能な解決策である。同イニシアティブの実施に向けて、SCE及びTemasek Foundationとのパートナー提携を、Niti Aayogは喜ばしく思う」と述べた。Niti Aayonは、「排水の回収・再利用は、都市部における水供給を持続可能な方法で確保する潜在的な解決策として位置付けられている。このアプローチは、他の水資源に対するプレッシャーを軽減するだけでなく、持続可能な水資源を包括的に管理することができる」との見解を示している。

インド政府は既に、収益確保(ビジネスモデル)の観点から都市の水供給を確保する「Atal Mission for Rejuvenation and Urban Transformation(Amrut)」を展開している。しかし、将来に向けて水資源を確実に確保するためには、水資源の増強は未だ不十分である。インドでは、都市部の約30%、農村地域の約70%の水道水は地下水に依存しており、地下水は日々枯渇しつつある。SCEは、シンガポールでの実績をインドへ適用することに関心を寄せている海外パートナーと協力して、排水の回収・再利用に向けて取り組んでいく。貿易産業省と外務省にて2006年に設立されたSCEは、シンガポールの16カ所に上る省庁や60以上の法定委員会と密接にかかわり、個々の海外政府のニーズに合致した解決策を提供する。

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