アフリカ大陸南部に位置する複数の諸国が加盟する南部アフリカ開発共同体(SADC:South Africa Development Community)は2019年5月下旬、最近の気候変動や水不足の深刻化に伴い、飲料水供給の強化とインフラ開発に向けて、利用可能な水資源の一つとして海水淡水化技術の活用を検討することを明らかにした。
SADCは、1980年に前身となる南部アフリカ開発調整会議(SADCC:South Africa Development Coordination Conference)が成立され、1992年に現名称に改称した機関である。タンザニア、ザンビア、モザンビーク、アンゴラ、ジンバブエ、コンゴ、ナミビア、南アフリカ共和国、マダガスカルなど、アフリカ大陸南部に位置する全16カ国が加盟し、ボツワナの首都ハボロネに事務局を構える。ナミビア初代大統領であるSam Nujoma氏の90歳を祝う誕生会の場にて、ナミビア国内の飲料水を確実に確保するために、海水淡水化の開発を優先事項として進めるべきであると、同氏は主張した。
また、ナミビア農業水森林省のAlpheus Naruseb大臣は、国内の長期的な水の安全供給を確保するために、大西洋沿岸の海水を淡水化した後、ボツワナまで輸送するパイプライン(導水管)を敷設する計画を示した。同大臣は、第38回水エネルギーSADC閣僚会議にて、導水管の敷設実現性に向けてボツワナとの協議を開始したことを明らかにした。同大臣はまた、ナミビア中央部や導水管のルート上にある地域へ水供給エリアを拡大するために、海水淡水化の実現可能性を現在調査中であるとした。Naruseb大臣は同閣僚会議にて、ナミビアにおける最近の水不足事情を報告するとともに、「我が国が水不足に直面し、国家の水セキュリティに対する脅威が増すにつれて、水供給インフラの開発を計画する専門委員会による支援の下、我が国の大統領は水セキュリティ閣僚委員会を任命した」と述べた。更に同大臣は、ナミビア南部に新設されたNeckartalダムに触れ、国内の水供給、エネルギー供給、食糧生産に同ダムが今後活用されると付け加えた。「今年のナミビア全土の降水量は平年を下回っており、穀物の生産や牧畜が降水量に大きく依存する放牧業や家畜業、農業が影響を受けている。全ての国内の主要ダムの貯水量は、水供給を十分に満たすレベルには全く達していない」と述べた。