Water Research誌に、Forward Osmosis Niches in Seawater Desalination and Wastewater Reuse *1(海水淡水化と廃水再利用における正浸透の利用状況)と題する論文が発表された。この論文は、これらふたつの分野における正浸透(FO)技術の利用現状を中心にまとめたもので、FOシステムをエネルギー、経済、それにおもな課題の観点から評価し、水処理産業におけるFOプロセスについて斬新な分類を試みている。
国際的な研究チームによるこの論文は、おもに海水淡水化と廃水再利用というふたつの分野におけるFO技術の利用状況に焦点を当てている。その上でこの論文は、淡水化、および水質要求度の低い水処理と水再利用のためのFO技術の具体的利用状況を説明するとともに、FOハイブリッド・システムのメリットや課題、コスト、それにFOに関する知識のギャップについて論じている。
FOは、上流側と下流側の水処理プロセスを統合して淡水化や水回収・再利用プロセス全体のエネルギー消費量を削減し、水・エネルギー連関の持続可能なソリューションを実現するための架け橋としての役割を果たすことができる。また、FOハイブリッド膜システムは、淡水化や廃水処理に使用する高圧逆浸透(RO)やナノ濾過(NF)など、従来の膜プロセスと比べて以下のメリットがあることが示されている。
- 化学薬品貯蔵や供給水システムの設備投資額および運営・保守費用を減らすことができる。
- 水質が改善される。
- プロセス配管のコストが削減される。
- 処理ユニットがよりフレキシブルになる。
- 淡水化および廃水処理プロセス全体の持続可能性を高める。
今後の大きな課題
上記のようなメリットにもかかわらず、FOシステムを商業的に立ち行く技術にするには、まだまだ大きな課題が残されている。なかでも最も重要なのは、脱塩率を高く保ち、内部濃度分極効果を低く維持することのできる高フラックス膜の開発である。このほか、費用対効果性が高くて毒性がなく、しかも効率的な回収プロセスによる再循環が可能なドロー溶液が使えるかどうかも重要である。
この論文は、ハイブリッドFOシステムのさまざまな特徴について詳しく述べるとともに、特に水処理業界における最新の利用状況に関して、システムのスケール・アップに向けた最近の技術開発にもとづく斬新な分類をおこないつつ説明している。
*1 R. Valladares Linares, Z. Li, S. Sarpc, Sz.S. Bucsa, G. Amy, J.S. Vrouwenvelder, 2014: Forward osmosis niches in seawater desalination and wastewater reuse, Water Research, doi:10.1016/j.watres.2014.08.021
http://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0043135414005880